弁護士として交通事故の案件を数百件以上集中的に取り扱ってきた経験をもとに,交通事故の被害に遭ってしまった際に後悔しないよう,皆様へぜひ知っておいていただきたいことをお話させていただきます。
前回は,「後遺障害申請に最低限必要な書類は決まっているが,それ以外に補足書類を付けて出すことは制限されていない。」とお話ししました。
今回は,「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと(申請方法)」についてお話しします。
そもそも,後遺障害の申請には,方法が二つあります。
一つは,相手方保険会社が被害者に代わって申請を行う「事前認定」,もう一つが被害者やその代理人(弁護士など)が申請を行う「被害者請求」です。
前回,後遺障害申請に必要な書類をお話ししましたが,もし「事前認定」で申請を行う場合は,被害者が書類を揃える必要はほとんどありません。
そのように聞くと,「事前認定のほうが楽そうだから,わざわざ手間をかけて被害者請求をするメリットはないのではないか。」と思われるかもしれませんが,事前認定には次のようなデメリットがあります。
それが,「事前認定の場合,どういった補足資料を添付されるか確認できない。」という点です。
前回お話ししたとおり,後遺障害申請に最低限必要な書類は決まっていますが,それ以外に資料を出してはいけないわけではありません。
相手方保険会社としては,もし後遺障害が認定されれば,それに伴って支払うべき損害賠償金が増えることになりますので,申請に際してできるだけ認定されないように働く可能性があります。
例えば,相手方保険会社が主治医に医療照会して得た回答書のうち,被害者に不都合な部分をマーカーで強調して出したり,担当者と被害者との電話での内容を一部切り取って,後遺障害認定に不利な事情として出したりすることが可能なのです。
一方で,被害者請求の場合は,必要であれば事故の大きさを示す資料(損傷した車両の写真や修理代明細など)や病院で取り付けたカルテなどを,有利な資料として添付することができます。
したがって,後遺障害を認定してもらう可能性を少しでも高めたいのであれば,申請を相手方保険会社に任せるのではなく,被害者請求を行うべきであり,治療終了時に相手方保険会社に対し「後遺障害申請は被害者請求で行います。」と伝えておくことが必要です。