弁護士の田中です。
最近は、換気のために開けてある窓からの風が寒くてなかなかつらいです。
よく冷え性といえば女性というイメージがありますが、男性でも寒いものは寒いです(笑)。
前回は、相手方保険会社が提示する金額は「最低限」の基準である自賠責基準よりも高いが、決して「適正」な基準ではないということをお話しさせていただきました。
今回は、自賠責基準の内訳についてお話しいたします。
インターネットなどで「自賠責基準」などと検索すると、大抵以下のようなことが書かれています。
〇傷害(けがのみ、後遺障害なし)の場合120万円
〇慰謝料は入通院一日につき4300円(事故日が2020年3月31日以前の場合は4200円)
(これ以外にも、休業損害についての定めや、後遺障害が認定されたときの金額、死亡した場合の金額などもありますが、ここでは割愛します。)
このような記載をご覧になった方から、「自賠責基準で計算するともっと高くなるはずなのに、相手方保険会社からの提示が低い。ごまかされているのではないか。」というご相談をいただくことはよくあります。
実は、上記記載自体は正しい情報なのですが、これには少し足りない情報がありますので、例を挙げながら説明させていただきます。
まず、傷害のみの場合、支払われる損害賠償金の総額は上限120万円ですが、これには治療費も含まれています。
治療費は、相手方に保険会社がついている場合は、大抵の場合保険会社から病院へ直接支払われますので、治療費を被害者(患者)が立て替えているなどの例外的な場合を除き、治療費分はこの120万円から差し引かれます。
そして、慰謝料は通院一日4300円ですが、通えば通うだけ慰謝料額が増えるというものではなく、実通院日数の2倍と総治療期間のどちらか少ないほうに4300円を掛けたものが慰謝料となります。
さらに、先ほどの「上限120万円」と治療費との兼ね合いで、もし治療費が高額になっていた場合は、慰謝料が上記の計算式どおりに支払われないこともあります。
ここで、
・総治療費80万円
・総治療期間6か月(180日)、実通院日数80日
・その他の項目はなし
のケースを例に見てみましょう。
まず、慰謝料の計算は、総治療期間と実通院日数×2のどちらか少ない方に4300円を掛けたものですが、今回は180日と80日×2=160日を比べると160日のほうが少ないので、4300円×160日=68万8000円となりそうです。
ところが、治療費が80万円かかっており、120万円-80万円=40万円ですので、慰謝料は上記の計算どおりは出ず、40万円が限度となってしまいます。
このように、自賠責保険は「上限120万円」という枠があるので、治療費がかさめばかさむほど実際にもらえる損害賠償金は少なくなってしまうという事態が起こります。
次回は、「弁護士基準(裁判所基準)」についてお話しいたします。