交通事故の損害賠償について~その4

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の損害賠償について~その4」として、「将来介護費」についてお話をさせていただきます。

今回お話をする将来介護費は、交通事故の賠償としてはかなりレアケースのものになりまして、相当重度な後遺障害が認定された場合の賠償項目となります。

「医師の指示または症状の程度により必要があると認められた場合」という条件付きですが、交通事故によって残ってしまった後遺障害のせいで介護が必要となった被害者のために、今後かかり続ける介護費を「将来介護費」として賠償を求めることができます。

職業付添人がつく場合にはその実費が、近親者付添人が介護する場合には1日につき8000円が賠償の対象となります。

例えば、交通事故によって後遺障害が認定され「常時介護が必要」と判断されているような場合には、将来にわたってかかり続ける介護施設における施設費用が、自宅で介護を行う場合には職業付添人による介護費用が、賠償の対象になると考えられます。

金額としてもかなり高額になる傾向があるので、もし将来にわたって介護が必要になると見込まれる場合には、「将来介護費」の賠償を求めることを忘れないようにしてください。

次回は、交通事故の損害賠償における「通院付添費」についてお話させていただきたいと思います。

交通事故の損害賠償について~その3

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の損害賠償について~その3」として、「将来治療費」についてお話をさせていただきます。

まず、交通事故の損害賠償の対象となるのは、原則として事故に遭ってから「症状固定日」までとなります。

症状固定日とは、交通事故による怪我の症状が完全に治ったかまたは一進一退の状態になりこれ以上の改善が見込めないと医師が判断した日を言います。

交通事故の怪我のせいで後遺障害が残ってしまって、その治療のために通院をしていたとしても、基本的にはその治療費は賠償の対象外であり、自己負担となるのが原則です。

もっとも、重度の後遺障害が残ってしまい、今後確実に治療費がかかる蓋然性があり、その金額について根拠をもって提示できる場合には、「将来治療費」として相手方に賠償を求めていくことが可能です。

具体的には、交通事故によって寝たきり状態になってしまい、医師からも今後回復する可能性はないと判断されているが、今後1か月1回必ず診察を受ける予定がある、といった場合には、将来にわたってかかり続ける治療費が賠償として認められる余地があります。

次回は、交通事故の損害賠償における「将来介護費」についてお話させていただきたいと思います。

交通事故の損害賠償について~その2

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の損害賠償について~その2」として、「治療費」についてお話をさせていただきます。

交通事故によって、怪我をしていまい、その治療のために病院や接骨院等の医療機関にかかった場合には、その治療費は損害賠償の対象となります。

多くのケースでは、加害者側の保険会社が「一括対応」という形で、直接医療機関に対して治療費の支払いをしてくれます。

もし、相手方保険会社が支払いをしてくれていないケースでは、相手方保険会社に対して後ほど賠償の請求を行う必要がありますので、必ず領収書等を保管するように気を付けてください。

交通事故の治療としては、整形外科、接骨院・整骨院等の通院は特別な事情がない限り賠償の対象となります。

一方で、心療内科への通院は、同乗されている方が亡くなられてしまった等相当な事情がない限りは交通事故と因果関係のある治療とは認められづらいといえます。

いずれにしても、医療機関での通院を始める前には治療費を対応してくれる相手方保険会社に通院をする旨を伝えてから治療を始めるよう気を付けてください。

次回は、交通事故の損害賠償における「将来治療費」についてお話させていただきたいと思います。

交通事故の損害賠償について~その1

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

私は、昨年450件ほど交通事故のご依頼をいただきましたが、その経験を踏まえ、今年は交通事故の損害賠償項目についてお話させていただこうと思います。

交通事故の損賠賠償においては様々な賠償項目がありますので、数回に分けてお話させていいただきます。

まず、交通事故における損害賠償については、代表的なものでは治療費、交通費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料等があります。

交通事故の損害賠償は、事故に遭った時点でいくらと決まるわけではなく、交通事故の通院等を経て、実際にどのような損害が生じたのか、あるいは、今後どのような損害が生じるのかを踏まえて、各損害賠償項目ごとに計算がされることになります。

「実際にかかった治療費はいくらだから、賠償項目における治療費は何円」という形で単純に決まるものもあれば、将来における損害を現在価値に引き直すといくらになるかを計算するために特殊な計算方法を使って金額を決めるものもあります。

実際交通事故に遭った場合には、どのような補償がされるのかを知っておけば安心できる要素もたくさんあるかと思いますので、弁護士として各損害賠償項目について説明させていだきます。

次回は、交通事故の損害賠償における「治療費」についてお話させていただきたいと思います。

交通事故の後遺障害について~その12

弁護士の田中浩登です。

今年も残すところ数日になりましたね。

今回は「交通事故の後遺障害について~その12」として、後遺障害逸失利益の計算において重要となる、労働能力喪失期間についてお話をさせていただきます。

後遺障害逸失利益を計算するにあたっては、①基礎収入、②労働能力喪失率、③労働能力喪失期間の3つの要素が重要となります。

①、②は前回ご説明させていただいたので、今回は③労働能力喪失期間についてお話します。

労働能力喪失期間とは、後遺障害が残ってしまったことにより、文字通り労働能力が失われてしまう期間はどれくらいか、という計算要素です。

後遺障害というのは、基本的には一生残ってしまう症状について認定されるものになりますので、67歳までの期間が労働能力喪失期間と考えるのが原則となります。

もっとも、むちうち症状については、一生症状が残るものの、徐々に馴化するとの考え方から、12級の場合で10年程度、14級の場合で5年程度に期間を制限して考えるのが裁判所の考え方となっています。

裁判においては、具体的な症状において適宜判断されるべきものとなっているので、丁寧な証明が必要な事項となります。

交通事故の後遺障害について~その11

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その11」として、後遺障害が認定された場合の後遺障害逸失利益についてお話をさせていただきます。

後遺障害逸失利益は、交通事故により後遺障害が残ってしまい、その症状によって今後の仕事等に影響が出ることへの補償としての賠償項目です。

後遺障害逸失利益を計算するにあたっては、①基礎収入、②労働能力喪失率、③労働能力喪失期間の3つの要素が重要となります。

①基礎収入は、原則としては、事故前年度の年収が使われることになります。

ですので、事故前年度の年収を源泉徴収票や課税証明書、あるいは確定申告書によって証明することが必要となります。

②労働能力喪失率は、後遺障害が残ってしまったことにより、どれだけの労働能力が失われてしまったかを示すもので、原則としては、認定された等級に基づいて喪失率を定めることになっています。

例えば、事故によって寝たきりになってしまい、常時介護が必要な状況で後遺障害等級が別表Ⅰ1級1号として認定された場合には、労働能力喪失率は100%となります。

一方、事故によって首や腰に他覚所見のないむちうち症状が残ってしまい、後遺障害等級が14級9号と認定された場合には、労働能力喪失率は5%となります。

次回は、後遺障害逸失利益を計算するにあたっての「③労働能力喪失期間」についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その10

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その10」として、後遺障害が認定された場合の賠償についてお話をさせていただきます。

後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益というふたつの項目について相手方に対して請求をしていくことができます。

まずは後遺障害慰謝料について。

後遺障害慰謝料は、交通事故により後遺障害が残ってしまったことについての精神的苦痛に対する補償としての賠償です。

精神的苦痛の感じ方は当然、個人によって異なるものではありますが、交通事故の賠償においては、認定された後遺障害等級に応じて後遺障害慰謝料の金額は決められています。

もっとも、弁護士が介入していない場合の自賠責保険での最低限の補償基準での後遺障害慰謝料と、弁護士に交渉を依頼した場合の裁判基準での後遺障害慰謝料とでは大きく金額が異なります。

後遺障害が認定された場合には、後遺障害慰謝料を増額するためにもぜひご相談をください。

次回は、後遺障害が認定された場合のもう一つの賠償項目である後遺障害逸失利益についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その9

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その9」として、症状固定後に被害者がしておくべきことについてお話をさせていただきます。

交通事故としての通院は、医師に後遺障害の診断書を書いてもらった症状固定日に終了することになります。

後遺障害の診断書を書いてもらったらあとは後遺障害の認定結果を待つだけ……では実はありません。

後遺障害診断書を書いてもらった症状固定日以後も、交通事故の被害者はしておくべきことがあります。

それは、通院していた病院への継続的な通院です。

症状固定日で交通事故としての通院は終わることになるため、症状固定日以後の通院は基本的に自己負担での通院になります。

自己負担にもかかわらず、なぜ通院を継続する必要があるのか。

その理由は2つあります。

1つは、後遺障害認定機関が通院先の病院に医療照会をする可能性があるからです。

後遺障害はずっと症状が続くからこそ認定されるべきところ、自己負担になったとたんに通院を終了していたとしたら、本当は症状がのこってないのではないかと疑われてしまいます。

もう1つは、認定されなかった場合の異議申し立てのためです。

症状固定後も通院を継続しており、痛みが残っているという診断書は異議申し立てにおける「新しい医学的証拠」として使うことができるので、認定されなかった場合に不服申し立てをすることができるのです。

次回は、後遺障害が認定された場合の賠償についてお話します。

交通事故の後遺障害について~その8

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その8」として、後遺障害の認定に納得いかない場合の手続きについてお話をさせていただきます。

後遺障害認定の申請をした結果、残念ながら等級の認定を受けられなかった場合、または認定は受けられたものの低い等級の認定しか受けられなかった場合には、認定結果を覆すための不服申し立ての手続きを取ることができます。

その手続きを「異議申立て」といいます。

この異議申立ての手続きは、再度の手続きをするために時間がかかるという点を除いては基本的には被害者にとってデメリットがない手続きになります。

異議申立てをした結果、より不利な認定になるということは基本的にありません。

もっとも、一度認定された結果を覆すためには、「新たな医学的証拠」が必要とされており、ただ「納得できない」と主張するだけでは認定の結果が変わることはありません。

そのため、症状固定まで通院していた病院から診断書を書いてもらうなどして、新しい医学的証拠を確保する必要があります。

次回は、症状固定後に被害者がしておくべきことについてお話します。

交通事故の後遺障害について~その7

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その7」として、後遺障害の認定において重視される最後の要素のお話をさせていただきます。

ここまで、後遺障害の認定においては、交通事故の状況、病院への通院頻度と通院期間、医師の診断書の記載が重要である旨をお伝えしました。

そして、最後に重要な要素となってくるのが、車両の壊れ具合です。

特にむちうち等の外から見てわからない症状の場合には、そのくらいの衝撃が身体にあったのかをはかるために、車両の壊れ具合がわかる写真や車両の修理見積が客観的な証拠として重要視されます。

本人が大変な症状を訴えていても、事故車両がほとんど壊れておらず、修理費用も僅少で済むような場合には、事故時の衝撃は大したことがなかったものと判断される傾向があります。

逆に、車両の損傷が大きい場合には、かなり衝撃が強かったであろうと想定され、後遺障害の認定もされやすくなります。

後遺障害の被害者請求で、ご自身ないし依頼をした弁護士が後遺障害の申請を行う場合には、車両の損傷の大きさがわかる資料を添付して申請を行うことで適切な認定を受けやすくなることがあります。

次回は、後遺障害の認定結果に納得がいかない場合の手続きについてお話します。

交通事故の後遺障害について~その6

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その6」として、後遺障害の認定において重視される要素のさらに続きのお話をさせていただきます。

前回までで、交通事故の状況及び病院への通院頻度と通院期間が大事とお話させていただきました。

重視される要素の3点目は、医師の診断書の記載です。

通院をしていた病院で、後遺障害認定の申請の際に後遺障害の診断書を書いてもらうことになります。

後遺障害の診断書は、医師が、症状固定時(治療しても症状が改善しなくなったとき)の症状が今後永続的に続くと判断して書く診断書になります。

そのため、そこに書いてある症状が後遺障害になるかの判断を受けられる症状となります。

逆に、後遺障害診断書に書かれていない症状は、基本的に後遺障害の判断がされないことになります。

また、後遺障害診断書の他にも、病院では毎月、経過診断書を作成しており、その経過診断書も後遺障害の判断に使われることになります。

事故当初より痛みが一貫している症状については後遺障害になる可能性がある一方で、途中で消失した症状や事故後2週間を超えてから発生した症状については後遺障害にはなりません。

次回は、後遺障害の認定において重視される最後の要素についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その5

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その5」として、後遺障害の認定において重視される要素の続きについてお話をさせていただきます。

前回は1点目として、どのような状況での交通事故かが判断要素になるとお伝えしました。

2点目は、病院への通院の頻度と通院期間です。

後遺障害の認定機関においては、整形外科等の病院での通院と医師の診察を重要な要素として後遺障害の判断に使っています。

むちうち等の当人以外には痛みがわからない症状で後遺障害の認定を受けるためには、医師の判断の下、半年以上、適切な頻度で整形外科での通院を継続していることがほぼ必須の条件となります。

接骨院・整骨院での治療は、交通事故の怪我を治すために有効なことが多いですが、後遺障害の認定機関においては整形外科の通院と比べほとんど認定を有利にする要素とはなりません。

ですので、接骨院・整骨院でしっかり身体を治療しつつも、後遺障害の認定を受けたいと考える場合には、少なくとも週に1回から10日に1回程度整形外科への通院を併用しておかなければなりません。

次回も引き続き、後遺障害の認定において重視される要素についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その4

こんにちは、弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その4」として、後遺障害の認定において重視される要素についてお話をさせていただきます。

後遺障害の認定の判断をするのは、通院先の医師ではなく、後遺障害の認定機関である旨はこの前お話させていただきました。

後遺障害の認定機関は、医師ではないので被害者の身体を直接見るわけではありません。

交通事故における様々な要素を書面審査して、後遺障害として認定するかどうかを決めています。

その後遺障害の認定機関において、いくつか認定において重視している要素がありますので、今回はその点についてお話します。

1点目は、どのような状況の交通事故か、という点です。

この点は、ネガティブチェック的な判断要素となっており、以下に示すような「一般的に軽い形態であると考えられる事故」に該当する場合には、かなり後遺障害の認定を受けるのが難しくなります。

具体的には、①駐車場内での事故、②逆突(相手方がバックしてきてこちらにぶつかってきたケース)での事故、③ミラー接触での事故、④クリープ現象による衝突事故、のいずれかに該当する場合には、よほどの例外的な事情がない限り後遺障害として認定されることはありません。

次回は、後遺障害の認定において重視される要素の続きについてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その3

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その3」として、後遺障害の認定を受けるための「被害者請求」という方法についてお話をさせていただきます。

前回、後遺障害認定の申請の方法として、「事前認定」という方法についてお話しました。

この方法は楽ではありますが、適切な認定を受けるために十分な証拠に基づいて判断されているかがわからないデメリットがあるとご説明しました。

もう1つの方法である「被害者請求」という方法は、ご自身または依頼をした弁護士の方で後遺障害の申請に必要な資料を準備して、認定の申請を行う方法になります。

この方法のメリットは、自分または依頼した弁護士が申請を行うので、認定のために有利になる資料を添付して申請を行うことで、適切な後遺障害の認定を受けやすいことにあります。

デメリットとしては、自分で申請の準備をするとなると必要な資料を集めるのが大変ということにあります。

もっとも、ご自身が依頼した弁護士に被害者請求を任せた場合には、そのてつづきのほとんどを弁護士に任せることができるので、それほど大変さを感じることはないと思われます。

弁護士費用特約が付いている保険に加入しているのであれば、弁護士に手続きを依頼したとしても、自己負担なく弁護士を使うことができるケースが多いので、弁護士に被害者請求を任せるという選択が取りやすいかと思います。 次回は、後遺障害の認定において重視される要素についてお話をさせていただきます。

交通事故の後遺障害について~その2

弁護士の田中浩登です。

東京は2月なのに春並みの暖かさですね!

さて、今回は「交通事故の後遺障害について~その2」として、後遺障害の認定を受けるための申請の方法についてお話をさせていただきます。

後遺障害認定を受けるための申請方法には2つあります。

1つは「事前認定」という方法で、もう1つは「被害者請求」という方法です。

まず、事前認定という方法ですが、この方法は、通院が終了した際に相手方保険会社に「後遺障害の申請をして欲しい」旨を伝えて、相手方保険会社に後遺障害の申請を行ってもらう方法になります。

事前認定の方法の一番のメリットは、楽であることです。

ご自身の方でほとんど動かなくても自動的に相手方保険会社が手続きを行ってくれるので、結果を待つだけで良いのです。

もっとも、事前認定にはデメリットもあります。

それは、すべての手続きを相手方保険会社に任せるため、どんな資料をもとに後遺障害の判断がされたのかがわかりません。

十分な証拠が提出されていればいいのですが、適切な認定を受けるためには不十分な資料のみで申請が行われてしまった結果、後遺障害として認定されないケースも少なからずあります。 次回は、もう1つの方法である「被害者請求」についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その1

昨年は皆様に大変お世話になりました。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、私は、交通事故を集中的に取り扱う弁護士として年に400件ほど交通事故のご依頼をいただいておりますが、交通事故のご相談の中でかなり質問をいただくのが「後遺障害」についてになります。

今回から数回に分けて、交通事故の後遺障害についてお話をさせていただこうと思います。

まず、交通事故における後遺障害とは何かについてご説明させていただきます。

交通事故における後遺障害とは、交通事故によって怪我をしてしまい、その怪我について半年以上通院治療を継続しても、一定程度の症状が残ってしまい、その後治療を継続しても一進一退の状況が続いてしまった場合に、交通事故の相手方の自賠責保険に後遺障害の認定の申請を行い、今後将来にわたって継続する症状として認定を受けることができたもののことをいいます。

厳密な話をすると非常にややこしい話になってしまいますが、交通事故の怪我をした時点で後遺障害が決まるわけではないこと、通院先の医師が後遺障害の認定をするわけではないことは知っておいていただけると良いと思います。 次回は、後遺障害の認定を受けるための申請の方法についてお話させていただきたいと思います。

交通事故に遭った!まず何をする?その10

今年もあと残すところ半月となりましたね。

例年、この時期は、年末に向けて解決に向かう事件も多く、ありがたいことに弁護士としてもかなり多忙なことが多いです。

年内にできることはすべて終わらせて、すっきりした気持ちで新年を迎えたいですね。

さて、今回は「交通事故に遭ったらいつ弁護士に相談すべきか」の続きをお話させていただきます。

前回は、その答えとして「弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほど良い」として、その理由として、早期に証拠を確保しておくため、とお伝えしました。

もう一つの理由は、「早い段階であれば、通院の仕方をアドバイスできるから」です。

しっかりと病院等に通院をしていれば何も問題はないのですが、通院から数か月経ってからご相談をいただくと「どうしてこんな通院をしてしまったんだ…」と正直手遅れな件も残念ながら少なくありません。

たとえば、1回も病院への通院がないまま、鍼灸治療を受けている件等は、その段階でご相談をいただいても、弁護士が相手方保険会社と交渉しても適切な補償を受けることは難しいと言わざるを得ません。

早い段階でご相談をいただきましたら、どのように通院をすれば保険会社からしっかり治療費を出してもらいやすいかなどアドバイスをすることができます。

今年は、「交通事故に遭った!まず何をする?」シリーズをお話させていただきました。

来年からは、「交通事故の後遺障害について」をお話させていただこうかと考えております。

皆様、良いお年をお迎えください。

交通事故に遭った!まず何をする?その9

最近東京は急に寒くなって、あっという間に秋から冬になってしまったような気がします。

毎年秋になったらお気に入りのカッコいいトレンチコートを着ようと意気込んでいるのですが、気付いたら時機を逸してしまいしょんぼりしている私です。

今月は、交通事故に遭ったらいつ弁護士に相談すべきかについてお話しします。

交通事故にあってしまったとき、どのタイミングで弁護士に相談すればいいのかわからないという方は多いのではないでしょうか

結論からいうと、弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほど良いといえます。

まず一つ目の理由としては、早い段階であれば、証拠の確保がしやすいということが挙げられます。

交通事故から間もない時期であれば、事故現場付近の防犯カメラなどの事故を記録した映像の確保ができたり、目撃証言が得られたりする可能性があります。

相手方と事故状況について言い分が食い違う場合では、映像や証言などの客観的証拠があるか否かで、結論が180度変わる可能性があります。

しかし、事故から時間が経ってしまうと、そのような証拠は失われてしまう可能性が高まります。

事故に遭ったご本人が、肉体的にも精神的にも大変な中で、これらの客観的証拠を収集するのは大変ですし、店舗の防犯カメラなどの場合は一般の方には開示してもらえないケースもありますので、弁護士に依頼したほうがスムーズに進む可能性が高いといえます。

次回は、交通事故に遭ったら弁護士に早く相談すべき理由の二つ目をお話します。

交通事故に遭った!まず何をする?その8

当事務所がある池袋周辺には、電動キックボードのポートがたくさんあるのですが、先日は一般民家の駐車場の一角にポートが設置されているのを見てびっくりしました。

それだけ需要が拡大しているということなのでしょうか。

交通事故をメインで取り扱う弁護士としては、とりあえず事故には気を付けて…とだけ言っておきます。

交通事故にあったらまずどうするかシリーズの第8回目は、前回に引き続き「相手方が分からないときはどうすればよいか?」です。

前回はご自身やご家族の人身傷害保険を利用しようという内容でしたが、今回は「労災保険の利用を検討」です。

お仕事中の事故はもちろん、通勤途中の事故の場合、労災保険の利用が可能です。

労災の申請について、「会社の労災を使ったら会社に不利益があるのではないか?それによって会社内で不当な扱いをされないか?」といったご心配を相談されることがあります。

ところが、通勤災害(通勤中の事故)において会社が労災を申請したとしても、それによって労災保険料が上がるということはありませんので、会社には何のデメリットもありません。

なので、もし心配でしたら、会社に申請をお願いする前に、上記のことを軽く伝えてみるとよいかもしれません。

次回は、「交通事故に遭ったあと、そもそもいつのタイミングで弁護士に相談すべきなのか?」についてお話しします。

交通事故に遭った!まず何をする?その7

9月に入り、ようやく東京も夕方は少し涼しくなってきたような気がします。

今年はあまりの暑さに、暑さ対策グッズをたくさん購入したのですが、そろそろ使わなくてよくなりそうです。

さて、交通事故にあったらまずどうするかシリーズの第7回目は、「相手方が分からないときはどうすればよいか?」です。

交通事故に遭ったとき、普通の常識ある当事者であれば逃げたりはしませんが、中には刑罰を科されることを恐れて逃げてしまう人間もいます。

相手方が誰か分からなければ、相手方の任意保険から治療費の支払いを受けられず治療自体どうすればよいか困ってしまう方もいらっしゃるかと思います。

もっとも、相手方の任意保険を使わなくても、治療費を工面する方法はいくつかあります。

その方法の一つ目が、人身傷害保険特約を利用することです。

ご自身の自動車の任意保険やご家族の任意保険に、「人身傷害保険」という特約が付いているか確認しましょう。

人身傷害保険の内容は、ご加入の保険により異なりますが、契約車両に搭乗中の事故にのみ適用されるものもあれば、中には他者の車両に搭乗中や、自動車事故とは関係ない歩行中や自転車乗車中の事故などの場合でも適用されるものもありますので、事故に遭ったらまずご加入の保険会社へ確認することをお勧めします。

そして、確認の結果ご自身の保険に人身傷害保険特約が付帯していなかったり、利用ができなかったりといった場合でも、ご家族が加入する保険に付帯している人身傷害保険特約を利用できる場合があります。

ここでいう「家族」の範囲は、大抵の場合、①記名被保険者(当該特約の契約者)の配偶者、②記名被保険者またはその配偶者と同居の親族、③記名被保険者の別居の未婚の子、とされています。

なお、②の親族は、「6親等以内の血族」、「3親等以内の姻族」という制限があります。

つまり、例えば一人暮らしをしている独身の大学生の方がひき逃げ事故に遭ったとして、ご実家のご家族がお持ちの自動車の保険に人身傷害保険特約が付帯していれば、それを利用することが可能ということです。

こういったお話をすると、「本当は相手がいるのに、自分の保険を使わないといけないなんて損ではないか。」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

もっとも、通常、人身傷害保険のみの利用の場合はノーカウント事故(等級に影響なし)として扱われるので保険料に影響しませんし、後から相手方が見つかった場合はご自身の保険会社から相手方に請求がされるので、相手方が治療費支払いを逃れられるわけではありません。

なので、まずは安心して人身傷害保険からの支払いでしっかりと治療を受け、怪我を治すことに専念しましょう。

次回は、相手方がわからないときどうするかの二つ目の方法についてお話しします。