交通事故の後遺障害について~その12

弁護士の田中浩登です。

今年も残すところ数日になりましたね。

今回は「交通事故の後遺障害について~その12」として、後遺障害逸失利益の計算において重要となる、労働能力喪失期間についてお話をさせていただきます。

後遺障害逸失利益を計算するにあたっては、①基礎収入、②労働能力喪失率、③労働能力喪失期間の3つの要素が重要となります。

①、②は前回ご説明させていただいたので、今回は③労働能力喪失期間についてお話します。

労働能力喪失期間とは、後遺障害が残ってしまったことにより、文字通り労働能力が失われてしまう期間はどれくらいか、という計算要素です。

後遺障害というのは、基本的には一生残ってしまう症状について認定されるものになりますので、67歳までの期間が労働能力喪失期間と考えるのが原則となります。

もっとも、むちうち症状については、一生症状が残るものの、徐々に馴化するとの考え方から、12級の場合で10年程度、14級の場合で5年程度に期間を制限して考えるのが裁判所の考え方となっています。

裁判においては、具体的な症状において適宜判断されるべきものとなっているので、丁寧な証明が必要な事項となります。

交通事故の後遺障害について~その11

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その11」として、後遺障害が認定された場合の後遺障害逸失利益についてお話をさせていただきます。

後遺障害逸失利益は、交通事故により後遺障害が残ってしまい、その症状によって今後の仕事等に影響が出ることへの補償としての賠償項目です。

後遺障害逸失利益を計算するにあたっては、①基礎収入、②労働能力喪失率、③労働能力喪失期間の3つの要素が重要となります。

①基礎収入は、原則としては、事故前年度の年収が使われることになります。

ですので、事故前年度の年収を源泉徴収票や課税証明書、あるいは確定申告書によって証明することが必要となります。

②労働能力喪失率は、後遺障害が残ってしまったことにより、どれだけの労働能力が失われてしまったかを示すもので、原則としては、認定された等級に基づいて喪失率を定めることになっています。

例えば、事故によって寝たきりになってしまい、常時介護が必要な状況で後遺障害等級が別表Ⅰ1級1号として認定された場合には、労働能力喪失率は100%となります。

一方、事故によって首や腰に他覚所見のないむちうち症状が残ってしまい、後遺障害等級が14級9号と認定された場合には、労働能力喪失率は5%となります。

次回は、後遺障害逸失利益を計算するにあたっての「③労働能力喪失期間」についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その10

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その10」として、後遺障害が認定された場合の賠償についてお話をさせていただきます。

後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益というふたつの項目について相手方に対して請求をしていくことができます。

まずは後遺障害慰謝料について。

後遺障害慰謝料は、交通事故により後遺障害が残ってしまったことについての精神的苦痛に対する補償としての賠償です。

精神的苦痛の感じ方は当然、個人によって異なるものではありますが、交通事故の賠償においては、認定された後遺障害等級に応じて後遺障害慰謝料の金額は決められています。

もっとも、弁護士が介入していない場合の自賠責保険での最低限の補償基準での後遺障害慰謝料と、弁護士に交渉を依頼した場合の裁判基準での後遺障害慰謝料とでは大きく金額が異なります。

後遺障害が認定された場合には、後遺障害慰謝料を増額するためにもぜひご相談をください。

次回は、後遺障害が認定された場合のもう一つの賠償項目である後遺障害逸失利益についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その9

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その9」として、症状固定後に被害者がしておくべきことについてお話をさせていただきます。

交通事故としての通院は、医師に後遺障害の診断書を書いてもらった症状固定日に終了することになります。

後遺障害の診断書を書いてもらったらあとは後遺障害の認定結果を待つだけ……では実はありません。

後遺障害診断書を書いてもらった症状固定日以後も、交通事故の被害者はしておくべきことがあります。

それは、通院していた病院への継続的な通院です。

症状固定日で交通事故としての通院は終わることになるため、症状固定日以後の通院は基本的に自己負担での通院になります。

自己負担にもかかわらず、なぜ通院を継続する必要があるのか。

その理由は2つあります。

1つは、後遺障害認定機関が通院先の病院に医療照会をする可能性があるからです。

後遺障害はずっと症状が続くからこそ認定されるべきところ、自己負担になったとたんに通院を終了していたとしたら、本当は症状がのこってないのではないかと疑われてしまいます。

もう1つは、認定されなかった場合の異議申し立てのためです。

症状固定後も通院を継続しており、痛みが残っているという診断書は異議申し立てにおける「新しい医学的証拠」として使うことができるので、認定されなかった場合に不服申し立てをすることができるのです。

次回は、後遺障害が認定された場合の賠償についてお話します。

交通事故の後遺障害について~その8

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その8」として、後遺障害の認定に納得いかない場合の手続きについてお話をさせていただきます。

後遺障害認定の申請をした結果、残念ながら等級の認定を受けられなかった場合、または認定は受けられたものの低い等級の認定しか受けられなかった場合には、認定結果を覆すための不服申し立ての手続きを取ることができます。

その手続きを「異議申立て」といいます。

この異議申立ての手続きは、再度の手続きをするために時間がかかるという点を除いては基本的には被害者にとってデメリットがない手続きになります。

異議申立てをした結果、より不利な認定になるということは基本的にありません。

もっとも、一度認定された結果を覆すためには、「新たな医学的証拠」が必要とされており、ただ「納得できない」と主張するだけでは認定の結果が変わることはありません。

そのため、症状固定まで通院していた病院から診断書を書いてもらうなどして、新しい医学的証拠を確保する必要があります。

次回は、症状固定後に被害者がしておくべきことについてお話します。

交通事故の後遺障害について~その7

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その7」として、後遺障害の認定において重視される最後の要素のお話をさせていただきます。

ここまで、後遺障害の認定においては、交通事故の状況、病院への通院頻度と通院期間、医師の診断書の記載が重要である旨をお伝えしました。

そして、最後に重要な要素となってくるのが、車両の壊れ具合です。

特にむちうち等の外から見てわからない症状の場合には、そのくらいの衝撃が身体にあったのかをはかるために、車両の壊れ具合がわかる写真や車両の修理見積が客観的な証拠として重要視されます。

本人が大変な症状を訴えていても、事故車両がほとんど壊れておらず、修理費用も僅少で済むような場合には、事故時の衝撃は大したことがなかったものと判断される傾向があります。

逆に、車両の損傷が大きい場合には、かなり衝撃が強かったであろうと想定され、後遺障害の認定もされやすくなります。

後遺障害の被害者請求で、ご自身ないし依頼をした弁護士が後遺障害の申請を行う場合には、車両の損傷の大きさがわかる資料を添付して申請を行うことで適切な認定を受けやすくなることがあります。

次回は、後遺障害の認定結果に納得がいかない場合の手続きについてお話します。

交通事故の後遺障害について~その6

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その6」として、後遺障害の認定において重視される要素のさらに続きのお話をさせていただきます。

前回までで、交通事故の状況及び病院への通院頻度と通院期間が大事とお話させていただきました。

重視される要素の3点目は、医師の診断書の記載です。

通院をしていた病院で、後遺障害認定の申請の際に後遺障害の診断書を書いてもらうことになります。

後遺障害の診断書は、医師が、症状固定時(治療しても症状が改善しなくなったとき)の症状が今後永続的に続くと判断して書く診断書になります。

そのため、そこに書いてある症状が後遺障害になるかの判断を受けられる症状となります。

逆に、後遺障害診断書に書かれていない症状は、基本的に後遺障害の判断がされないことになります。

また、後遺障害診断書の他にも、病院では毎月、経過診断書を作成しており、その経過診断書も後遺障害の判断に使われることになります。

事故当初より痛みが一貫している症状については後遺障害になる可能性がある一方で、途中で消失した症状や事故後2週間を超えてから発生した症状については後遺障害にはなりません。

次回は、後遺障害の認定において重視される最後の要素についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その5

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その5」として、後遺障害の認定において重視される要素の続きについてお話をさせていただきます。

前回は1点目として、どのような状況での交通事故かが判断要素になるとお伝えしました。

2点目は、病院への通院の頻度と通院期間です。

後遺障害の認定機関においては、整形外科等の病院での通院と医師の診察を重要な要素として後遺障害の判断に使っています。

むちうち等の当人以外には痛みがわからない症状で後遺障害の認定を受けるためには、医師の判断の下、半年以上、適切な頻度で整形外科での通院を継続していることがほぼ必須の条件となります。

接骨院・整骨院での治療は、交通事故の怪我を治すために有効なことが多いですが、後遺障害の認定機関においては整形外科の通院と比べほとんど認定を有利にする要素とはなりません。

ですので、接骨院・整骨院でしっかり身体を治療しつつも、後遺障害の認定を受けたいと考える場合には、少なくとも週に1回から10日に1回程度整形外科への通院を併用しておかなければなりません。

次回も引き続き、後遺障害の認定において重視される要素についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その4

こんにちは、弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その4」として、後遺障害の認定において重視される要素についてお話をさせていただきます。

後遺障害の認定の判断をするのは、通院先の医師ではなく、後遺障害の認定機関である旨はこの前お話させていただきました。

後遺障害の認定機関は、医師ではないので被害者の身体を直接見るわけではありません。

交通事故における様々な要素を書面審査して、後遺障害として認定するかどうかを決めています。

その後遺障害の認定機関において、いくつか認定において重視している要素がありますので、今回はその点についてお話します。

1点目は、どのような状況の交通事故か、という点です。

この点は、ネガティブチェック的な判断要素となっており、以下に示すような「一般的に軽い形態であると考えられる事故」に該当する場合には、かなり後遺障害の認定を受けるのが難しくなります。

具体的には、①駐車場内での事故、②逆突(相手方がバックしてきてこちらにぶつかってきたケース)での事故、③ミラー接触での事故、④クリープ現象による衝突事故、のいずれかに該当する場合には、よほどの例外的な事情がない限り後遺障害として認定されることはありません。

次回は、後遺障害の認定において重視される要素の続きについてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その3

弁護士の田中浩登です。

今回は「交通事故の後遺障害について~その3」として、後遺障害の認定を受けるための「被害者請求」という方法についてお話をさせていただきます。

前回、後遺障害認定の申請の方法として、「事前認定」という方法についてお話しました。

この方法は楽ではありますが、適切な認定を受けるために十分な証拠に基づいて判断されているかがわからないデメリットがあるとご説明しました。

もう1つの方法である「被害者請求」という方法は、ご自身または依頼をした弁護士の方で後遺障害の申請に必要な資料を準備して、認定の申請を行う方法になります。

この方法のメリットは、自分または依頼した弁護士が申請を行うので、認定のために有利になる資料を添付して申請を行うことで、適切な後遺障害の認定を受けやすいことにあります。

デメリットとしては、自分で申請の準備をするとなると必要な資料を集めるのが大変ということにあります。

もっとも、ご自身が依頼した弁護士に被害者請求を任せた場合には、そのてつづきのほとんどを弁護士に任せることができるので、それほど大変さを感じることはないと思われます。

弁護士費用特約が付いている保険に加入しているのであれば、弁護士に手続きを依頼したとしても、自己負担なく弁護士を使うことができるケースが多いので、弁護士に被害者請求を任せるという選択が取りやすいかと思います。 次回は、後遺障害の認定において重視される要素についてお話をさせていただきます。

交通事故の後遺障害について~その2

弁護士の田中浩登です。

東京は2月なのに春並みの暖かさですね!

さて、今回は「交通事故の後遺障害について~その2」として、後遺障害の認定を受けるための申請の方法についてお話をさせていただきます。

後遺障害認定を受けるための申請方法には2つあります。

1つは「事前認定」という方法で、もう1つは「被害者請求」という方法です。

まず、事前認定という方法ですが、この方法は、通院が終了した際に相手方保険会社に「後遺障害の申請をして欲しい」旨を伝えて、相手方保険会社に後遺障害の申請を行ってもらう方法になります。

事前認定の方法の一番のメリットは、楽であることです。

ご自身の方でほとんど動かなくても自動的に相手方保険会社が手続きを行ってくれるので、結果を待つだけで良いのです。

もっとも、事前認定にはデメリットもあります。

それは、すべての手続きを相手方保険会社に任せるため、どんな資料をもとに後遺障害の判断がされたのかがわかりません。

十分な証拠が提出されていればいいのですが、適切な認定を受けるためには不十分な資料のみで申請が行われてしまった結果、後遺障害として認定されないケースも少なからずあります。 次回は、もう1つの方法である「被害者請求」についてお話させていただきます。

交通事故の後遺障害について~その1

昨年は皆様に大変お世話になりました。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、私は、交通事故を集中的に取り扱う弁護士として年に400件ほど交通事故のご依頼をいただいておりますが、交通事故のご相談の中でかなり質問をいただくのが「後遺障害」についてになります。

今回から数回に分けて、交通事故の後遺障害についてお話をさせていただこうと思います。

まず、交通事故における後遺障害とは何かについてご説明させていただきます。

交通事故における後遺障害とは、交通事故によって怪我をしてしまい、その怪我について半年以上通院治療を継続しても、一定程度の症状が残ってしまい、その後治療を継続しても一進一退の状況が続いてしまった場合に、交通事故の相手方の自賠責保険に後遺障害の認定の申請を行い、今後将来にわたって継続する症状として認定を受けることができたもののことをいいます。

厳密な話をすると非常にややこしい話になってしまいますが、交通事故の怪我をした時点で後遺障害が決まるわけではないこと、通院先の医師が後遺障害の認定をするわけではないことは知っておいていただけると良いと思います。 次回は、後遺障害の認定を受けるための申請の方法についてお話させていただきたいと思います。

交通事故に遭った!まず何をする?その10

今年もあと残すところ半月となりましたね。

例年、この時期は、年末に向けて解決に向かう事件も多く、ありがたいことに弁護士としてもかなり多忙なことが多いです。

年内にできることはすべて終わらせて、すっきりした気持ちで新年を迎えたいですね。

さて、今回は「交通事故に遭ったらいつ弁護士に相談すべきか」の続きをお話させていただきます。

前回は、その答えとして「弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほど良い」として、その理由として、早期に証拠を確保しておくため、とお伝えしました。

もう一つの理由は、「早い段階であれば、通院の仕方をアドバイスできるから」です。

しっかりと病院等に通院をしていれば何も問題はないのですが、通院から数か月経ってからご相談をいただくと「どうしてこんな通院をしてしまったんだ…」と正直手遅れな件も残念ながら少なくありません。

たとえば、1回も病院への通院がないまま、鍼灸治療を受けている件等は、その段階でご相談をいただいても、弁護士が相手方保険会社と交渉しても適切な補償を受けることは難しいと言わざるを得ません。

早い段階でご相談をいただきましたら、どのように通院をすれば保険会社からしっかり治療費を出してもらいやすいかなどアドバイスをすることができます。

今年は、「交通事故に遭った!まず何をする?」シリーズをお話させていただきました。

来年からは、「交通事故の後遺障害について」をお話させていただこうかと考えております。

皆様、良いお年をお迎えください。

交通事故に遭った!まず何をする?その9

最近東京は急に寒くなって、あっという間に秋から冬になってしまったような気がします。

毎年秋になったらお気に入りのカッコいいトレンチコートを着ようと意気込んでいるのですが、気付いたら時機を逸してしまいしょんぼりしている私です。

今月は、交通事故に遭ったらいつ弁護士に相談すべきかについてお話しします。

交通事故にあってしまったとき、どのタイミングで弁護士に相談すればいいのかわからないという方は多いのではないでしょうか

結論からいうと、弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほど良いといえます。

まず一つ目の理由としては、早い段階であれば、証拠の確保がしやすいということが挙げられます。

交通事故から間もない時期であれば、事故現場付近の防犯カメラなどの事故を記録した映像の確保ができたり、目撃証言が得られたりする可能性があります。

相手方と事故状況について言い分が食い違う場合では、映像や証言などの客観的証拠があるか否かで、結論が180度変わる可能性があります。

しかし、事故から時間が経ってしまうと、そのような証拠は失われてしまう可能性が高まります。

事故に遭ったご本人が、肉体的にも精神的にも大変な中で、これらの客観的証拠を収集するのは大変ですし、店舗の防犯カメラなどの場合は一般の方には開示してもらえないケースもありますので、弁護士に依頼したほうがスムーズに進む可能性が高いといえます。

次回は、交通事故に遭ったら弁護士に早く相談すべき理由の二つ目をお話します。

交通事故に遭った!まず何をする?その8

当事務所がある池袋周辺には、電動キックボードのポートがたくさんあるのですが、先日は一般民家の駐車場の一角にポートが設置されているのを見てびっくりしました。

それだけ需要が拡大しているということなのでしょうか。

交通事故をメインで取り扱う弁護士としては、とりあえず事故には気を付けて…とだけ言っておきます。

交通事故にあったらまずどうするかシリーズの第8回目は、前回に引き続き「相手方が分からないときはどうすればよいか?」です。

前回はご自身やご家族の人身傷害保険を利用しようという内容でしたが、今回は「労災保険の利用を検討」です。

お仕事中の事故はもちろん、通勤途中の事故の場合、労災保険の利用が可能です。

労災の申請について、「会社の労災を使ったら会社に不利益があるのではないか?それによって会社内で不当な扱いをされないか?」といったご心配を相談されることがあります。

ところが、通勤災害(通勤中の事故)において会社が労災を申請したとしても、それによって労災保険料が上がるということはありませんので、会社には何のデメリットもありません。

なので、もし心配でしたら、会社に申請をお願いする前に、上記のことを軽く伝えてみるとよいかもしれません。

次回は、「交通事故に遭ったあと、そもそもいつのタイミングで弁護士に相談すべきなのか?」についてお話しします。

交通事故に遭った!まず何をする?その7

9月に入り、ようやく東京も夕方は少し涼しくなってきたような気がします。

今年はあまりの暑さに、暑さ対策グッズをたくさん購入したのですが、そろそろ使わなくてよくなりそうです。

さて、交通事故にあったらまずどうするかシリーズの第7回目は、「相手方が分からないときはどうすればよいか?」です。

交通事故に遭ったとき、普通の常識ある当事者であれば逃げたりはしませんが、中には刑罰を科されることを恐れて逃げてしまう人間もいます。

相手方が誰か分からなければ、相手方の任意保険から治療費の支払いを受けられず治療自体どうすればよいか困ってしまう方もいらっしゃるかと思います。

もっとも、相手方の任意保険を使わなくても、治療費を工面する方法はいくつかあります。

その方法の一つ目が、人身傷害保険特約を利用することです。

ご自身の自動車の任意保険やご家族の任意保険に、「人身傷害保険」という特約が付いているか確認しましょう。

人身傷害保険の内容は、ご加入の保険により異なりますが、契約車両に搭乗中の事故にのみ適用されるものもあれば、中には他者の車両に搭乗中や、自動車事故とは関係ない歩行中や自転車乗車中の事故などの場合でも適用されるものもありますので、事故に遭ったらまずご加入の保険会社へ確認することをお勧めします。

そして、確認の結果ご自身の保険に人身傷害保険特約が付帯していなかったり、利用ができなかったりといった場合でも、ご家族が加入する保険に付帯している人身傷害保険特約を利用できる場合があります。

ここでいう「家族」の範囲は、大抵の場合、①記名被保険者(当該特約の契約者)の配偶者、②記名被保険者またはその配偶者と同居の親族、③記名被保険者の別居の未婚の子、とされています。

なお、②の親族は、「6親等以内の血族」、「3親等以内の姻族」という制限があります。

つまり、例えば一人暮らしをしている独身の大学生の方がひき逃げ事故に遭ったとして、ご実家のご家族がお持ちの自動車の保険に人身傷害保険特約が付帯していれば、それを利用することが可能ということです。

こういったお話をすると、「本当は相手がいるのに、自分の保険を使わないといけないなんて損ではないか。」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

もっとも、通常、人身傷害保険のみの利用の場合はノーカウント事故(等級に影響なし)として扱われるので保険料に影響しませんし、後から相手方が見つかった場合はご自身の保険会社から相手方に請求がされるので、相手方が治療費支払いを逃れられるわけではありません。

なので、まずは安心して人身傷害保険からの支払いでしっかりと治療を受け、怪我を治すことに専念しましょう。

次回は、相手方がわからないときどうするかの二つ目の方法についてお話しします。

交通事故に遭った!まず何をする?その6

皆様、台風の影響は大丈夫でしたでしょうか。

東京では少し雨が降ったものの、大雨にはならなかった印象でした。

さて、本日は「交通事故に遭った!まず何をする?」第6弾として、交通事故での警察対応の話その2をお話させていただきたいと思います。

まず、今回の話をする前に、誤解がないように伝えておくと、基本的に交通事故の処理をしている警察官は大多数、被害者に寄り添ってきちんと適切な処理をしてくれている方々です。

ただ、稀に警察から不適切な対応をされて困って相談をいただくことがあるので、その話をしておきたいと思います。

① 人身事故にすることを拒絶する警察官

警察において、物件事故のままであるか、人身事故にするのかによって、事故の処理としての労力は大きく変わってきます。

基本的に、被害者が怪我をしてしまい、人身事故として処理することを希望すれば、警察の方で人身事故としての処理をしてくれることになります。

しかし、中には、人身事故に切り替えるのを面倒くさがってか、人身事故にすることについてあれこれ理由を付けて拒絶する警察官がいます。

少なくとも、事故直後のタイミングであれば、警察で人身事故処理することを拒絶できる法的な根拠はないので、自信をもって人身事故の切り替えを依頼すべきです。

② 加害者側の言い分に沿った陳述書を作ろうとする警察官

人身事故扱いになった場合、加害者側・被害者側両方とも警察から事故時の状況等について話を聞かれることになります。

その際に話したことは、被害者の陳述書という形で証拠に残ることになります。

基本的には、しっかり言い分を反映した陳述書を作ってくれますが、警察官の中には、加害者の言い分と被害者の言い分が異なっていると処理が面倒だということで「加害者が~といっているから、こういう状況だったんじゃないの」と内容を押し付けてくる方がごく稀にいます。

そのような自分が言っていないことが陳述書にされそうになった場合は、訂正を依頼すべきであり、訂正してもらえないならサインするのを拒絶すべきです。

後になってから、そう思ってなかったけど訂正するのが面倒くさいからサインしてしまったなどという言い分は通らないので、気を付けてくださいね。

交通事故に遭った!まず何をする?その5

最近の東京は暑すぎます。

毎日祈るような気持ちで(今日こそは過ごしやすい気温であってほしいとの願いを込めて)天気予報を見るのですが、ほぼ毎日その祈りもむなしく非情な気温が表示され、日々打ちひしがれています。

ところで、今日のブログは、交通事故に遭ったらどうするか第五弾として、警察でどうすればよいのかについてお話しします。

日々のご相談のうち、交通事故での警察での対応で一番よく聞かれるのが、「人身事故にすべきか、物件事故でもよいのか。」です。

交通事故で怪我をしてしまった被害者の方に対し、相手方保険会社の担当者から、「物件事故のままでも問題なく損害賠償金は支払われますので、あえて人身事故にしなくてもよいですよ。人身事故にすると実況見分などで時間を取られるので面倒ですよ。」などと言われたり、相手方本人から「免許の点数に響くので物件事故のままにしてほしい。物件事故のままにしてくれたら賠償は上乗せして払う。」と言われたり(十中八九示談で上乗せなんかしてくれないので信じないように!)、はたまた警察で「人身事故にするには当事者双方が警察署に来なくてはならないので、被害者の方だけが来ても対応できません。加害者の方を説得して一緒に来てください。」などと言われたりすることもあります。

これらの発言を聞くと、面倒くさそうだし、とくにデメリットがないなら物件事故のままでよいかなと思ってしまいそうになりますが、ちょっと待ってください。

結論から先に話すと、被害者側であれば人身事故にしておくのがオススメです。

人身事故と物件事故で何が違うのかと言うと、加害者側の観点からすると、人身事故になると、免許の点数に響いたり(行政罰)、ひどい事故対応だと刑事責任が問われたりすることがあります。

つまり、ぜひ加害者側としては人身事故は避けたいところです。

では、被害者側からはどうでしょうか。

人身事故にしておくと、「実況見分」がされて、警察によって事故状況がきちんと記録されます。

実況見分調書では、事故状況についての現場見取図が作成され、衝突の位置などが数値とともに記録されるだけでなく、事故状況についての双方の言い分が記録されます。

そのため、事故状況について争いがある際に、現場見取図をもとに過失を立証することが可能なだけでなく、加害者が事故状況について言い分を変えてくるのを防ぐことができます。

さらに、人身事故にせず、物件事故にしておくと、後遺障害が問題となったときに軽い事故と判断される可能性が高まります。

後遺障害の認定において、後遺障害の有無や程度を判断する大きな要素として、「後遺障害は生じるほどの大きな事故だったか。」という要素があります。

一般的に、大きな事故でそれなりの怪我を負ったならば、人身事故として届け出をするだろうという推認が働くことから、物件事故のままということはそこまで大きな事故ではなかったのではないかと考えられてしまう恐れがあります。

したがって、半年以上痛みが続きそうな大きな怪我を負った場合には、人身事故にしておくのが安全といえます。

最後に、よく警察で言われることとして上に挙げた、「被害者と加害者が両方一緒に来ないと実況見分ができない。」というのは誤りです。

もしそうだとしたら、ひき逃げの場合はどんなに怪我がひどくても人身事故にできず実況見分調書も作成されないことになってしまいます。

もしそう言われた場合はこのブログを思い出して「弁護士がそんなことはないと言ってました。」と自信をもっておっしゃってくださいね。

交通事故に遭った!まず何をする?その4

6月に入って、信じられないくらい暑い日もあれば、雨で急に寒くなる日がある難しい気候になりましたね。

皆様はお身体壊したりはしていないでしょうか。

私自身、すこし風邪をひいてしまい、最近少し喉が痛いです。

本日は交通事故にあってしまった場合の通院の仕方について、お話をさせていただければと思います。

まず、弁護士として必ず伝えておきたいことは「身体で痛いところがあるのであれば、必ず整形外科に通院をすること」です。
交通事故の場合、多くのケースでは相手方の保険会社が治療費を支払ってくれます。

しかし、治療費の支払い(保険会社では「一括対応」と呼びます。)は保険会社としてはサービスで行っているものであり、どこまで治療費を支払うかは保険会社が判断して決めることになります。

なるべくしっかり保険会社に治療費を支払ってもらうためには、しっかり整形外科にかかって、医師に身体の状態を把握してもらい、それを保険会社に伝えてもらうことが重要です。

通院頻度は、主治医の先生と相談して決めることではありますが、整形外科のリハビリのみを受けるのであれば、最低週2回程度、他の医療機関での治療を受ける場合でも、2週間に1回は通院をしておけると、保険会社からもしっかり通院していると認識してもらいやすいと思います。

また、交通事故においては接骨院で治療を受けることもできます。

ただし、通院するにあたっては、整形外科で接骨院に通院することをしっかり話しておいた方が、後々保険会社から接骨院の治療費の件でトラブルになることが少ないです。

接骨院はたくさんあるので、先生とお話して交通事故に詳しい、しっかりした対応ができる先生のところを探して通院すると良いでしょう。

交通事故に遭った!まず何をする?その3

ゴールデンウィークはあんなに暑くてぐったりしたのに、最近の東京は雨で寒い日が多いですね。

皆様寒暖差で体調を崩したりしていないでしょうか?

今回は、交通事故に遭ったらまずどう動くべきかの第三弾として、病院での症状の伝え方についてお話しします。

これは、法律とはまったく関係のない話に思えますが、交通事故案件の解決と病院での治療は切っても切れない関係にあり、適切な治療を受けられないと怪我が治らないだけでなく最終的な賠償額にも影響してくる可能性があります。

そして、適切な治療を受けるには、病院で自身の症状を医師にどう伝えるかが非常に重要となるのです。

1.病院では、痛いところをすべて伝えること
初診時にとりあえずここだけと、一番痛いところだけ伝えるのはNGです。

なぜなら、医師からすれば患者さんから痛いと言われていないところは「痛くないところ」と認識されてしまうからです。

そして、その伝えていない部位の痛みが後から非常に強くなったとしても、「初診時には痛みを訴えていなかったのに後から痛いと言ってきたということは、事故とその痛みは無関係の可能性がある。」として、その部位につき相手方任意保険から治療費が支払われない可能性があります。

もし初診時に動揺して伝え忘れた部位があった場合、できれば事故から2週間以内に再度受診して痛いところをしっかり伝えてください。


2.医師の質問に対しては、端的に答えること
 医師から「どこが痛いですか?」と尋ねられたら、「首と腰と右肩が痛いです。」のように、質問には端的に答えた方が良いです。
 中には「どこが痛いですか?」と聞かれているのに、「何年前にどこどこを怪我して、今回の交通事故でこんな風にぶつけたのか、最初は痛くなかったけど、2日後くらいからだんだん気になりだして…」と言った感じで身の上話を始めてしまう方がいらっしゃいます。
 特に整形外科は患者さんの人数も多く、対応する医師の方も忙しいので、そういう人に対してはハイハイと話をあしらわれてしまい、結果として自身の症状を伝えられないままになってしまうことが多いようです。

そうならないためにも、受診前に最低限話すべきメモを作っておくと良いです。

例えば、

・いつの事故か

・どのような事故か(自動車に乗車中とか、歩行中など。相手が一時停止しなかった…など、詳しい事故状況は不要です。)

・痛い所はどこか(少しでも痛いところはすべてピックアップしてください。)

だけでもメモしておけば、少なくとも初診時に伝えるべき内容は医師に伝えられます。


3.いつも痛いところについては、きちんと「いつも痛い」と伝えておくこと
 カルテの記載は簡単なものになるので、きちんと毎回痛いと伝えておかないと、誤解されて治ったと記載されることがあります。

また、痛みを伝える際、いつも痛いが朝起き上がる際は特に痛いという意味で、「朝起き上がるときにすごく痛くて…。」などと伝えると、医師としては「普段は痛くないが、朝起き上がるときだけは痛い。」と、全く違う意味に捉えられる可能性が非常に高いので、いつも痛い場合は必ず言葉を省略せず、いつも痛いことをきちんと伝えましょう。