東京は桜もすっかり散り、最近は暖かいを通り越して暑いと感じる日も多くなってきましたね。
最近は気候が良いので土日に自転車に乗って少し遠出をすることもあるのですが、以前のブログで触れたように自転車に乗車する際はヘルメットの着用が努力義務化されたため、帽子にも見えるおしゃれな自転車用ヘルメットを購入しました。
実は、司法修習中にもサイクリングを楽しもうと思い、割と本格的は自転車用のヘルメットを購入して使用していたのですが、最近は使う機会もないかなと思って一年ほど前に手放してしまっていました。
ヘルメットの着用が義務化されると知ったとき、それなら手放さなかったのに…と残念に思ったのですが、古いものは経年劣化もあったでしょうし、おしゃれな帽子風ヘルメットも手に入ったので、結果としてはよしとしています(本当はやっぱりちょっと悔しい…)。
さて、前回のブログで、交通事故に遭ったらどうするかをお話ししました。
今回は、その続きとして、交通事故による怪我で病院に行く際のお話をします。
まず大前提として、交通事故で怪我をしたら、なるべくすぐ、できれば当日中に病院へ行ってください。
頭部などを負傷していた場合、気付かないうちに脳内出血が広がって命に係わる事態となることもありますが、すぐに受診し検査を行うことで、そのような可能性を少しでも減らすことができます。
また、今繁忙期だから仕事を休みたくないと考えたり、痛いから家でちょっと休んで体調が良くなってから行こうなどと考えたりする方が実は多いのですが、このような行動は後から自身に不利な誤解を招く恐れがあります。
例えば、治療費を支払う立場である相手方の任意保険会社から、「事故後すぐに病院に行っていないということは、症状がそこまでひどくないか、もしくは症状がほとんどなかったに違いない。」と勘違いされた結果、治療費の支払いが不当に短い期間で打ち切られてしまう可能性があります。
さらに、交通事故から初回の受診までの期間が空きすぎてしまうと、交通事故の後に別の要因で怪我をした可能性を排除できないとして、事故と怪我との因果関係が否定され、治療費の支払い自体が拒否されてしまう可能性もあります。
これらのことから、交通事故後に少しでも体のどこかが痛いなどの症状があるならば、必ずすぐに病院を受診してください。
次回は、病院でどのように症状を伝えるべきかについてお話しします。
交通事故に遭った!まず何をする?
弁護士の田中です。
最近の東京は3月だというのに暑すぎじゃないでしょうか?
ついこの間までコートを着ていたというのに、最近ではシャツ一枚でもいいのではと思うほどの陽気ですね。
先日、家族の行事ごとで大きな紅白餅を食べる機会があり(大変大きいので食べきれず一部はまだ冷凍してあるくらいの大きさなのです!)、餅好きの私は毎日ウッキウキなのですが、暖かくなってきたことで家族は焼いた餅を食べる気分ではなくなってしまったそうで、最近はひとりで餅をせっせと焼いて美味しくいただいています。
つきたてで冷凍したので、焼くとスーパーで売っている普通の切り餅とは比べ物にならないほど柔らかく伸びて、それはそれは美味しいです!
ところで、この春高校を卒業して、自動車の免許を取る方も多いと思います。
どれだけ気を付けていても、運が悪ければ巻き込まれてしまうのが交通事故ですので、ここで交通事故にあったらまずその日のうちに何をすべきか、最低限のポイントだけまとめたいと思います。
①移動が可能であれば、路肩など安全な場所に移動
道路上にいるままだと、第二、第三の事故を招きかねないためです。
②警察へ事故の連絡
「大した事故じゃないし…。」などといって警察に連絡しないままにしていると、その後任意保険が使えない事態になりかねないですし、そもそも事故の報告は道路交通法72条1項後段に定められた車両運転者の義務です。
③自分や相手、巻き込まれた方などが怪我をしていれば救急車を呼ぶ
負傷者の救護は、道路交通法72条1項前段に定められた義務です。
④相手方の氏名や連絡先の確認
任意保険会社へ連絡する際にかならず聞かれますし、もし相手方が無保険の場合は今後相手方と直接やり取りすることになりますので、必ず必要です。
念のため、氏名は漢字込みのフルネームで確認し、電話番号はその場で一度鳴らして確認できるとよりよいです。
ちなみに、のちに弁護士へご相談しようと思っている場合にも、利益相反の確認などで相手方の名前は必須となります。
⑤任意保険会社へ事故の連絡
事故により怪我をして病院を受診する場合、任意保険会社と連絡がついていれば事故当日の受診でも治療費を負担してくれる場合もありますので、治療費の立て替えなどをしなくてすみます。
⑥(怪我をしたが③で救急車を呼ぶほどではなかった場合)病院を受診
事故直後は興奮状態で痛みをそこまで感じないということもありますので、少しでも痛みを感じたら受診し、レントゲン撮影など検査を行いましょう。
忙しいからなどといって放っておいた場合、後から痛くなっても事故との因果関係を否定される可能性があるので注意が必要です。
次回は、事故の当日以降何をすべきかを取り上げます。
雪と冬用タイヤ
先日は東京都心でも雪が降りましたね。
事務所のある池袋も、午前中はうっすら街路樹に雪が積もって、白い幻想的な景色に少しうきうきしました。
そして、白といえば餅ですよね。
先月のブログで私の餅好きをカミングアウトしたところ、身近な何人かから反響があり、「餅の食べ方が砂糖醤油と餅巾着だけなんて、私に言わせれば正直ニワカですね。もっと色々開拓してください。」と、叱咤なのか激励なのかよく分からないコメントをもらいました。
どなたかおすすめの食べ方がありましたらこっそり教えていただけるとうれしいです。
ところで、積雪時の自動車等の運転で気を付けなければならない重要な点は、冬用タイヤの着用です。
積雪又は凍結した路面では、冬用タイヤの装着等いわゆる防滑措置の義務が、沖縄県を除くすべての都道府県道路交通法施行細則又は道路交通規則によって規定されています。
そして、違反した場合は反則金が定められており、大型車は7000円、普通車と自動二輪車は6000円、原付車は5000円となっています。
では、どの程度の降雪で冬用タイヤの着用が必要かについてですが、各都道府県の定めにより若干変わってきます。
ちなみに、東京都の場合は、東京都道路交通規則第8条第6号で、「積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態にある道路において、自動車又は原動機付自転車を運転するときは、タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること。」と規定しています。
つまり、雪は降っているが道路上には雪がないという状態であれば、「積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態にある道路」にはあたらないので、着用なでは必要ないといえそうです。
もっとも、出発時はそこまで降り積もる予想ではなかったけれども、帰宅時は予想外に積もったという場合や、日中溶けかかったグジュグジュの雪が夜中に凍結する場合なども十分考えられます。
さらに、そのような場合で交通事故を起こしてしまった場合は、冬用タイヤを装着していれば事故を避けられた、又は被害を軽減できたとして過失割合が加算される可能性があります。
東京に住む方は雪道での運転に慣れていない方も多いと思いますので、雪予報の日はなるべく自家用車での出勤を控えるのがベストかと思います。
自転車のヘルメット
新年あけましておめでとうございます。弁護士の田中です。
お正月といえば、「お餅」ですよね。
私は無類のお餅好きで、お正月だけと言わず一年中お餅を食べたいくらいなのですが、家族はそうでもないようで、「え、なんでこんな時にお餅を食べるの?」と怪訝な顔をされて、なかなかお餅を出してもらえないのです。
そんななか、お正月前後の数日間は特に理由を言わなくても大手を振ってお餅が食べられる、私にとっては最高にハッピーな日なのです。
ちなみに、私の好きなお餅の食べ方は、砂糖醤油をつけて海苔で巻く食べ方なのですが、最近餅巾着にもハマっており、お餅の無限の可能性を感じています。
ところで、道路交通法の改正により、今年の4月から年齢を問わず自転車に乗るすべての人にヘルメットの着用が義務づけられることになりました。
以前は、児童又は幼児についてのみ、乗車用ヘルメットをかぶらせるよう保護者が努めなければならないとされていましたが、改正後は全員について乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならないとされています。
努力義務ですので、これに反してヘルメットをかぶらず自転車に乗っても、何か切符を切られたり罰金となったりするわけではありません。
(ちなみに、自転車での違反行為についても、自動車の場合と同じく切符を切られることはあります。ただし、自動車と違い自転車の場合は通称青切符と呼ばれる交通反則通告制度の対象外のため、すべて赤切符となり、反則金で逃れることができずすべて刑事上の責任を問われることになります。)
ただし、交通事故に遭ったときにヘルメットを着用していなかった場合で、怪我とヘルメット不使用との間に因果関係が認められるならば(ヘルメットをしていれば頭部の怪我がより軽かったと考えられる場合など)、損害額につき何割か過失相殺されることが考えられます。
これを聞いたとき、競技用でもない自転車でヘルメットはダサいなと少し思いましたが、探してみると普通の帽子のような見た目のヘルメットもあるようなので、今度買いに行こうかなと思っています。
子どもとの自転車二人乗り
今年もあとわずかになりました。
池袋は至る所がイルミネーションでキラキラしていて、くたくたに疲れ切っていても帰り道は少しだけウキウキします。
今月は、意外と知らずに道路交通法に違反しているかも?という例として、赤ちゃんと自転車について取り上げます。
道路交通法57条2項は、「公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限について定めることができる。」とし、各都道府県の公安委員会が定めた道路交通規則により自転車の二人乗りは原則として禁止されています。
もっとも、この道路交通規則は、例外的に自転車の二人乗りが許される場合も規定されており、例えば東京都道路交通規則10条1項アからウではその例外として、
①幼児用座席に小学校就学までの以下の子を1人乗せる
②幼児2人同乗用の特別な装置が付いた自転車の幼児用座席に症っ港就学までの子を2人乗せる
③タンデム車に定員以下の人数を乗せる
④三輪車に定員以下の人数を乗せる
⑤抱っこ紐で6歳未満の子をおんぶして乗る
等と定めています。
つまり、幼児用座席に小学生を乗せたり、子どもを前で抱っこして自転車に乗ったりすることは、道路交通法違反となってしまうのです。
そして、このような二人乗りは、重心が不安定になって事故が起きやすく、運転している方も乗せているお子さんも怪我を負う危険性が高まりますので、絶対にやめましょう。
自転車の赤切符
今日11月8日(火)は、皆既月食と天王星食がありました。
東京は天気も良かったので、月がだんだんと赤黒くなっていく様子がよく見えました。
残念ながら、私は目が良くないので天王星が隠れるところは見えませんでしたが、こういうときのために双眼鏡を買っておこうかなと思います。
ちなみに、皆既食中に惑星食が起きるのはなんと442年ぶりだそうで、442年前というと本能寺の変の2年前(1580年)なので、もしかしたら織田信長などの戦国武将も見たかもしれないと思うと、なんだかワクワクしますね。惑星食だけに・・・
ところで、警視庁は先月中旬に、自転車による交通違反の取り締まりを強化し、これまでは警告のみだった違反にも赤切符(告知票)を交付する方針であると発表しました。
特に取り締まりを強化する行為として、「信号無視」、「一時不停止」、「右側通行」、「徐行せず歩道を走行」の四つを挙げています。
近年、交通事故のうち自転車が一方または双方当事者であったものの件数の割合は年々増加しており、警視庁のホームページによれば2016年には32.1パーセントだったものが2021年には43.6パーセントにまで増加しています。
この自転車事故の増加は、ここ最近のデリバリーサービス普及と、それに伴う自転車利用の増加が要因の一つと考えられます。
自動車で速度超過などの際に交付される青切符(交通反則告知書)は反則金を支払えば刑事罰が課されないのに対し、赤切符は裁判が行われ、判決内容によって罰金刑や懲役刑となる、非常に重いものです。
自転車は免許もいらず非常に身近な乗り物ですが、利用する際は交通ルールを遵守していただきたいと思います。
電動キックボード
最近、池袋の当事務所の周辺で電動キックボードのシェアレンタルサービスを非常によく見かけるようになりました。
池袋駅西武口近くのダイヤゲートや、西口のメトロポリタンホテルだけでなく、マンションの駐輪場の脇にもポートが設置されており、ここ数か月で一気に普及したなあと驚いています。
本来、電動キックボードは原動機付自転車扱いであり、ヘルメットの着用が義務づけられています。
ところが、このシェアレンタルサービスの電動キックボードは「小型特殊自動車」という、小型のトラクターやコンバインなどと同じ扱いになっており、ヘルメットの着用は任意となっています。
なぜこのような特別扱いになっているかというと、産業競争力強化法および経済産業省の新事業特例制度による実証実験として、この電動キックボードのシェアレンタルサービスが提供されているからなのです。
そして、小型特殊自動車の場合、制限速度は時速15kmなのですが、これは普通のママチャリが走る速度とほぼ同じと言われています。
ママチャリと同じ速度と聞くと安全そうに聞こえますし、それならノーヘルでも問題ないように思えますが、その多くが歩道を走るママチャリと違い、電動キックボードは車道を走る分、自動車との接触の恐れは非常に高いですし、転倒すれば大けがをする可能性もあります。
電動キックボードを普及させたい国の施策の一環なのでしょうが、交通事故を取り扱う弁護士としては、ヘルメット着用は義務化してもらいたいと思います。
オンライン飲み会にて
最近は夜肌寒い日も増えてきましたね。
私は肩が凝るのが嫌で、ジャケットは依頼者様と会う時か裁判の時しか着ない主義のため、最近はシャツに薄いカーディガンを羽織るのみなのですが、風が強い日はもう少し厚手のカーディガンにしようかな、でも日中はそれじゃ暑いときもあるよな…などと、どうでもいいことで日々迷っています。
とはいえ、私は寒すぎるのがとても苦手なので、これくらいの肌寒さでとどめておいて欲しいなと思います。
ところで、先日司法修習の同期の弁護士たちとオンライン飲み会をしました。
私は普段交通事故の案件を取り扱うことが多いのですが、他の分野に取り組む同期の話は非常にためになりますし、とても刺激を受けます。
その同期に、知的財産法などの著作権関連を主に取り扱う弁護士がおり、話のなかで最近SNS関係でも著作権が問題になる場面が非常に多いという話を聞きました。
私も一応Facebookを使っていますが、中には「読書記録」として本の表紙や中身の写真の画像が投稿されているものがあり、著作権的にどうなのだろうと思うことが少なからずあったので、個人的に非常に興味深い話でした。
その同期に、分かりやすい入門編の本として、『SNS別最新著作権入門』(井上拓先生著、誠文堂新光社)という本をお勧めしてもらったので、今日本屋で購入してきました。
さっそく読んでみたいと思います!
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(死亡慰謝料3)
まだまだ暑い日が続きますね。
実は、私は昔からブドウが大好きで、特に巨峰とピオーネには目がないのですが、9月はそれらのブドウの旬の時期なので、実はとても楽しみな月でもあります。
今回は、慰謝料の加算事由について裁判所がどのように考えているか、裁判例とともにご紹介します。
まず、慰謝料の加算事由は、大きく分けて
①加害者に故意もしくは重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらに信号無視、薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転等)または著しく不誠実な態度がある場合、
②被害者の親族が精神疾患に罹患した場合、
③その他、の3パターンがあります。
中でもケースとして多いのが一つ目の①加害者に故意もしくは重過失または著しく不誠実な態度がある場合です。
この例としては、加害者が酒酔い運転で車両を対向車線に進入させ事故を生じさせたうえに、事故後加害者が携帯電話を掛けたり小便をしたり煙草を吸ったりするだけで救助活動を一切しなかったこと、捜査段階で自らの罪を逃れるため被害者がセンターラインを先にオーバーしてきたと供述したことを考慮し、一家の支柱であった被害者本人につき2600万円、妻500万円、母500万円の合計3600万円を認めた裁判例(東京地判平成16年2月25日)があります。
これは、酒酔い運転という重過失、救助活動をせず、捜査において虚偽の供述をするという著しく不誠実な態度が考慮されたものと考えられます。
次回は、死亡逸失利益について取り上げます。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(死亡慰謝料2)
前回のブログで、私は冬と夏とを比べたら夏のほうが好きと言いましたが、最近の暑さに前言を撤回しようかとすら思い始めています。
工事現場などで作業される方向けに、ファンがついていて服の内部を空気が循環するようになっている空調服というものがありますが、スーツの下に着ても違和感のないデザインの空調服が販売されれば、この蒸し暑さが少し和らぐのになあ…などと思っています。
今回は、今回は、保険会社に任せきりにしていると低く見積もられてしまう死亡慰謝料のお話として、慰謝料の加算事由とは何かのお話をさせていただきます。
そもそも、慰謝料とは被害者の精神的苦痛を金銭に換算して賠償するものであり、一口に交通事故による精神的苦痛といっても人により感じ方は様々ですし、交通事故の形態も個々の事案ごとに大きく異なるため、それを一つ一つ掬い上げて金銭評価することは非常に困難です。
そのために、自賠責基準でも弁護士基準でも、怪我の程度や後遺障害の等級などの大まかな事故の内容ごとに慰謝料の基準を定め、ある程度の事情については一般的な不利益としてその中に含まれると考えられています。
もっとも、その「一般的な不利益」を超えるほどの重大な事由については、慰謝料の金額の考慮要素として評価すべきというのが裁判所の考え方です。
次回は、死亡慰謝料の加算事由についての判例を紹介いたします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(死亡慰謝料)
突然ですが、みなさんは夏と冬どちらがお好きでしょうか。
私の家族は、強いて言うなら冬と言っており、その理由としては、
①冬は着こめば何とかなるが、夏は仮に裸になっても暑い。
②東京で冬に凍死する人はめったにいないが、夏は熱中症で死亡するおそれは非常に高く、真に警戒すべきは夏である。
とのことでした。
私は昔から寒いのが本当に本当に本当に苦手で、確かに上記の理由は一理あるとは思っていても、夏と冬なら夏の方が好きです。
今回は、保険会社に任せきりにしていると低く見積もられてしまう損害賠償金の項目として、死亡慰謝料のお話をさせていただきます。
死亡慰謝料とは、交通事故により死亡してしまったことにつき、その死亡した本人が被ったであろう精神的損害と、その遺族が被った精神的損害をあわせたものです。
自賠責保険では、死亡した本人の慰謝料が350万円、遺族(被害者の父母、配偶者及び子ども、養子、認知した子、胎児を含む)の慰謝料が、請求者が1人の場合は550万円、2人の場合は650万円、3人以上の場合は750万円で、死亡した被害者に被扶養者がいる場合はこの金額に200万円を加算するとされています。
一方で弁護士基準(裁判所基準)の場合、死亡した被害者が一家の支柱(当該被害者の世帯が,主として被害者の収入によって生計を維持している場合をいいます)だと2800万円、母親・配偶者だと2500万円、その他(独身の男女、子供、単身の高齢者など)の場合2000万円から2500万円とされています。
自賠責保険の基準では、死亡した本人の慰謝料と遺族の慰謝料が別に規定されていましたが、弁護士基準の場合は本人の慰謝料と遺族の慰謝料をあわせて上記の金額となります。
このように、自賠責基準と弁護士基準を比較してみると、スタートラインからして金額が大きく違うことがわかります。
さらに、弁護士が金額の交渉をする場合、慰謝料の加算事由というものも重視され、これが金額に大きな影響を与えます。
次回は、死亡慰謝料における加算事由について説明いたします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害逸失利益③)
段々とジメジメした日が増えてきましたね。
昔は雨の日があまり好きではなかったのですが、弁護士になった一年目にかなり奮発してよい傘を購入してから、雨の日がむしろ楽しみになりました。
なりたてほやほやの新人弁護士には痛い出費だったのですが、大事に使うのでどこかに置き忘れて無くすこともないですし、丈夫なので壊れることもなく、もう十分に元は取れたのかなとも思います。
前回は、損害額の計算を相手方保険会社任せにしていると後遺障害逸失利益が低く見積もられてしまうケースの一つ目として、労働能力喪失期間の算定についてお話ししました。
今回は、相手方保険会社任せにしていると後遺障害逸失利益が低く見積もられてしまうケースの二つ目として、基礎年収をいくらとするかについてお話しします。
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が生じたことで労働能力が一部または全部失われ、それによって本来将来にわたって獲得できるはずであった賃金等の収入を失ったことに対する補填です。
そして、将来にわたって獲得できるはずであった収入の算定は、原則として事故当時の実際の収入額を基礎として計算するのが明確ではありますが、後遺障害逸失利益は将来の長期間にわたる所得の問題であり、特に日本は年齢が上がれば上がるほど収入も上がっていくという年功序列制度がまだ強いため、将来にわたって事故当時の低い収入額を基礎とするのが相当ではない場合があります。
そのため、おおむね30歳未満の若い方については、賃金センサスの全年齢平均賃金を用いるのを原則とするのが裁判所の考え方です。
ところが、保険会社は、そのような方針を知ってか知らずか、若い方の逸失利益の計算でも当然のように事故当時の低い収入額を基礎とした提示を出してきます。
ここでそのまま納得して示談してしまうと、後遺障害逸失利益の金額が下手をすると数百万近く変わってしまうケースもあるのです。
次回は、死亡慰謝料についてお話しします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害逸失利益②)
5月くらいの気温って、そこまで暑くもなく寒くもなく、とても過ごしやすいですよね。
私は春生まれだからなのか寒いのも暑いのも大の苦手なため、四季なんてなくていいからずっと5月くらいの気候でいてほしいなんて思ってしまうことがあります。
前回は、自賠責から支払われる後遺障害逸失利益は本来受け取れるはずの金額よりかなり少ない可能性があること、損害額の計算を相手方保険会社任せにしていると損をしてしまう可能性があることをお話ししました。
今回は、前回お話ししたポイント以外にも、損害額の計算を相手方保険会社任せにしていると後遺障害逸失利益が低く見積もられてしまうケースの①労働能力喪失期間の算定、についてお話しします。
交通事故における後遺障害の建前としては、症状固定後その症状が今後一生治ることがないことを前提としており、原則として労働能力喪失期間は症状固定時から67歳まで(症状固定時の年齢が67歳を超える場合または症状固定時から67歳までの年齢が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる場合は、簡易生命表の平均余命の2分の1の期間)です。
ところが、後遺障害として認定される事案の多くを占める、いわゆるむち打ち症状については、裁判所の指針として、「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)の場合は5年程度、「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)の場合は10年程度に制限する例が多く見られます。
これは、神経症状は器質的損傷(身体組織そのものに生じた損傷)とは異なり、普段の生活でだんだん痛みに慣れてくることが多く、一生治らないとはいえないという判断によるものと言われています。
そして、保険会社もこの裁判所の判断に乗っかって、当然のように労働能力喪失期間を制限した示談案を提示してきます。
もっとも、すべてのむち打ち症状で痛みがなくなっていくわけではなく、個々の怪我の大きさ次第となりますし、仮に制限されるとしても何年とすべきかは個別判断となるはずです。
さらに、保険会社は、神経症状以外の場合ですら特に理由なく労働能力喪失期間を制限してくるケースも多々あります。
ですので、保険会社が提示してくる示談案の中には、弁護士が精査すれば労働能力喪失期間が大幅に伸び、後遺障害逸失利益が倍近くになるケースも少なからずあるのです。
次回は、弁護士に依頼することで後遺障害逸失利益の金額が非常に大きく変わるケースの二つ目、②基礎年収をいくらとするか、についてお話しします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害逸失利益①)
4月となり、出勤時に新入社員なのかな?と思われる若い方を見かけることが多くなりました。
私も含め、弊事務所の新人弁護士の入所時期は4月ではなく12月なのですが(司法修習が終わり、二回試験の結果が出て法曹となる資格を得るのが12月半ば→結果が出次第すぐに入所となるため)、それでも4月になるとなんとなく初々しい気持ちになってしまいます。
前回では、弁護士基準と自賠責基準で基準が大きく違う項目の2つ目として、「後遺障害慰謝料」のお話をさせていただきました。
今回は、「後遺障害逸失利益」のお話をさせていただきます。
そもそも、後遺障害逸失利益とは何か?ですが、簡単に言えば「交通事故による怪我で後遺障害が生じなければ事故前と同じように今後も100パーセントの能力で仕事ができたはずなのに、後遺障害によってその能力が一部または全部失われてしまったことにより被害者が被った不利益を補填するもの」です。
後遺障害によってどれだけの不利益が生じたかについては、個々の被害者ごとに個別具体的に算出するのではなく、後遺障害の等級や種類に応じて類型的に「労働能力喪失率」としてパーセンテージが決められています。
この労働能力喪失率に、被害者の基礎収入と労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数を掛けたものが、後遺障害逸失利益となります。
ここまで読んで、「労働能力喪失率があらかじめ決まっているのなら、自賠責基準で計算しようが弁護士に依頼しようが特に変わらないのでは?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、労働能力喪失率に争いがあるごく一部の事案を除き、パーセンテージの部分については基本的には変わりません。
ところが、自賠責基準の場合は、後遺障害等級に応じて支払われる金額に上限があるため、実際に生じた逸失利益を全額支払ってもらえるわけではないのです。
例えば、後遺障害14級が認定された場合、後遺障害慰謝料として32万円、後遺障害逸失利益として43万円の、合わせて75万円を上限として支払われますが、本来であれば多くの方が上限を超えることが予想されます。
仮に、後遺障害14級(労働能力喪失率5パーセント)、基礎収入200万円、労働能力喪失期間5年(ライプニッツ係数4.594)とすると、計算上は200万円×0.05×4.594=45万9400円となるはずですが、前述のとおり自賠責基準では上限が43万円となるので、上限を超えた2万9400円分は受け取れないことになります。
保険会社各社が被害者あてに出してくる示談書の内訳を長年見ていると、傷害慰謝料や休業損害は自賠責基準ではなく「弊社基準」(自賠責基準より若干高いが、弁護士基準よりはだいぶ低めです)で出してくることが多い一方で、なぜか後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は自賠責基準どおりの金額で出してくることが多いので、相手方保険会社任せにしていると本来受け取れるはずの後遺障害逸失利益より低い金額で示談させられてしまう可能性があります。
また、それ以外にも、保険会社任せにした場合と弁護士に依頼した場合では、そもそも①労働能力喪失期間が何年か、②基礎年収をいくらとするか、の2点が大きく異なる場合があり、本来であれば計算式自体が違うということも十分あり得ますので、弁護士に依頼することで金額が非常に大きく変わるケースも少なからずあります。
次回は、この①について解説していきたいと思います。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害慰謝料)
「1月は往ぬ、2月は逃げる、3月は去る」などと言いますが、この間お正月だったと思ったのにもう3月になってしまいました。
春分の日を過ぎても東京は寒い日が多いですが、暦の上では3月はもう春ですので、これから少しずつ暖かくなってくるのが楽しみです。
前回は、「弁護士基準と自賠責基準の違い」という話から少し横道に逸れて、むちうちで他覚所見がある場合とない場合の違いということについてお話しさせていただきました。
今回は、話を戻して、弁護士基準と自賠責基準で基準が大きく違う項目の二つ目の「後遺障害慰謝料」のお話をさせていただきます。
自賠責基準の場合、例えば14級が認定された場合は後遺障害慰謝料として32万円、12級が認定された場合は93万円が支払われます。
一方で弁護士基準の場合、14級が認定されたときの後遺障害慰謝料は110万円、12級が認定された場合は290万円となり、自賠責基準と弁護士基準を比較すると3倍近い差があることになります。
自賠責保険はあくまで最低限の保障でしかないので、本来受け取るべき金額とは大きく差があることになります。
なお、この弁護士基準の金額はあくまで基本の金額なので、増額事由によってはこれより高い金額となることもあります。
裁判例による増額事由の一例としては、加害者が故意に事故を起こした場合や、無免許運転やひき逃げ、飲酒運転など、加害者に重過失がある場合、事故後に事故の証拠を隠滅したり、虚偽の供述や不合理な主張をして事故の責任を争ったりした場合などがあります。
さらに、被害者が植物状態や寝たきりなど重度の後遺障害を負い、近親者が被害者の死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合は、被害者本人だけでなく、近親者も後遺障害慰謝料を請求することができます。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(他覚所見について)
2月は個人的に好きな月の一つです。
なぜかというと、私の好きな花である蝋梅が咲く季節だからです。
蝋梅は、蝋細工のようにほんのりと透ける花びらも綺麗ですし、香りもとてもよいので、外を歩いていて蝋梅が植えられているところを見つけると嬉しくなってしまいます。
東京には、蝋梅が植えられている大きな公園がいくつかあるので、休みの日に行きたいと思っています。
前回は、弁護士基準における入通院慰謝料のお話をさせていただきました。
今回は、「他覚所見」についてお話しさせていただきます。
「他覚所見」とは、病院での検査や医師による触診・視診などの診察、画像検査(レントゲンやMRIなど)や医学的検査(血液検査や神経伝導検査など)により、客観的に捉えることができる所見のことを指します。
簡単に言うと、「ここの痛み等の原因は、事故によって生じたこれであると検査によって明らかになっているもの」です。
交通事故で多いパターンの一つが、むちうちで首や腰に痛みが出て、整形外科で「ヘルニア」と診断されるケースです。
実は、これらのケースの多くが、このヘルニアは事故そのものが原因で生じたというより、もともとあったヘルニアが事故を契機に悪化した、もしくは事故に遭って検査をしたらヘルニアが見つかったというケースです。
事故によりヘルニアが生じたのか、もともとあったヘルニアなのかは、MRIを撮ることで分かります。
MRIを撮ったとき、そのヘルニアが最近発生したものであれば、T2撮影法で炎症箇所が白く写るからです。
そして、症状がある箇所に事故により白く写ったヘルニアがある場合には「他覚所見あり」となりますが、白く写らないヘルニアの場合は事故により生じたものではないとされ、「他覚所見なし」となります。
ですので、むちうちでMRIを撮ったら症状がある箇所にもとからあったヘルニアがあったという場合は、「むちうちで他覚所見のない場合」として、入通院慰謝料につき別表Ⅱが適用されることになります。
次回は、弁護士基準と自賠責基準で計算方法や基準が大きく違う項目として、②後遺障害慰謝料を取り上げたいと思います。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(弁護士基準②)
あけましておめでとうございます。
皆様は初詣にはどこか行きましたでしょうか。
去年は新型コロナウイルスの影響もあり、混み合いそうな初詣はなしにしたのですが、今年はせっかくだからと元旦に近所の神社へお参りに行きました。
元旦も、いつもの冬の早朝も同じはずなのに、なぜか空気が澄んでいるような気がしますよね。
前回に引き続き、今回も弁護士基準についてお話しさせていただきます。
弁護士基準と自賠責基準で計算方法や基準が大きく違う項目として、①入通院慰謝料、②後遺障害慰謝料、③後遺障害逸失利益、④死亡慰謝料、⑤死亡逸失利益、が挙げられます。
今回は、①入通院慰謝料を取り上げたいと思います。
①の入通院慰謝料は、自賠責基準とは異なり、一日あたり何円という計算ではなく、総入通院期間で計算します。
そして、通院1か月で○○円、2か月で○○円といった表があり、怪我の程度によって別表Ⅰと別表Ⅱという表を使い分けます。
原則として別表Ⅰを用いますが、むちうちで他覚所見がない場合や、軽い打撲、軽い挫創の場合は別表Ⅱを用います。
この表の金額はあくまで目安なので、怪我の部位や程度、事故の悪質性によって増減しますし、総通院期間は長いけれどもほとんど通院していないという場合は、別表Ⅰ該当のケースでは実通院日数の3.5倍、別表Ⅱ該当のケースでは実通院日数の3倍を通院期間とみなすこともあります。
先ほど、別表Ⅰと別表Ⅱの表の使い分けのところで、「むちうちで他覚所見がない場合」という例を挙げました。
次回は、このことについてお話しさせていただきます。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(弁護士基準①)
12月は師走といいますが、この時期は保険会社も年内に示談をまとめてすっきりしたいからか、交渉が進むテンポが比較的速く、電話もひっきりなしに掛かってくるため、弁護「士」も事務所の中を駆け回って大忙しです。
さて、前回は損害賠償金の「自賠責基準」についてのお話をいたしました。
今回は、「弁護士基準(裁判所基準)」についてお話しいたします。
まず、弁護士基準とは、弁護士が代理人として相手方保険会社と交渉する際に用いられる基準です。
裁判になった場合に裁判所が用いる基準と同じことから、裁判所基準とも呼ばれます。
基準自体は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)と呼ばれる、過去の裁判例を集積して作成された算定基準が記載された本に基づいています。
この本自体は、発行元である日弁連交通事故相談センター(東京の弁護士会館にあります)で誰でも購入することができますし、どうやらフリマサイトなどでも売っている方がいらっしゃるようですので、一般の方も入手自体は可能です。
そのため、これを用いて弁護士でない一般の方が交渉してもよさそうですが、なぜかどの保険会社も「弁護士基準で主張したいなら弁護士を入れるか裁判を提起するかどちらかにしてください。そうでなければ交渉できません。」と言ってきます。
長年交通事故の案件を取り扱っていますが、一般の方で弁護士基準を用いて交渉に成功したという話は残念ながらまだ聞いたことがありません。
(弁護士が事故の当事者なら弁護士基準で交渉できるのでしょうか?私は幸いにも弁護士になってからはまだ事故に遭っていないので、試してみたことはありません。)
次回は、弁護士基準と自賠責基準でどのような項目の金額が変わるのかについてお話しいたします。
今年も当ブログをお読みいただきありがとうございました。来る年もどうぞよろしくお願いいたします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(自賠責基準)
弁護士の田中です。
最近は、換気のために開けてある窓からの風が寒くてなかなかつらいです。
よく冷え性といえば女性というイメージがありますが、男性でも寒いものは寒いです(笑)。
前回は、相手方保険会社が提示する金額は「最低限」の基準である自賠責基準よりも高いが、決して「適正」な基準ではないということをお話しさせていただきました。
今回は、自賠責基準の内訳についてお話しいたします。
インターネットなどで「自賠責基準」などと検索すると、大抵以下のようなことが書かれています。
〇傷害(けがのみ、後遺障害なし)の場合120万円
〇慰謝料は入通院一日につき4300円(事故日が2020年3月31日以前の場合は4200円)
(これ以外にも、休業損害についての定めや、後遺障害が認定されたときの金額、死亡した場合の金額などもありますが、ここでは割愛します。)
このような記載をご覧になった方から、「自賠責基準で計算するともっと高くなるはずなのに、相手方保険会社からの提示が低い。ごまかされているのではないか。」というご相談をいただくことはよくあります。
実は、上記記載自体は正しい情報なのですが、これには少し足りない情報がありますので、例を挙げながら説明させていただきます。
まず、傷害のみの場合、支払われる損害賠償金の総額は上限120万円ですが、これには治療費も含まれています。
治療費は、相手方に保険会社がついている場合は、大抵の場合保険会社から病院へ直接支払われますので、治療費を被害者(患者)が立て替えているなどの例外的な場合を除き、治療費分はこの120万円から差し引かれます。
そして、慰謝料は通院一日4300円ですが、通えば通うだけ慰謝料額が増えるというものではなく、実通院日数の2倍と総治療期間のどちらか少ないほうに4300円を掛けたものが慰謝料となります。
さらに、先ほどの「上限120万円」と治療費との兼ね合いで、もし治療費が高額になっていた場合は、慰謝料が上記の計算式どおりに支払われないこともあります。
ここで、
・総治療費80万円
・総治療期間6か月(180日)、実通院日数80日
・その他の項目はなし
のケースを例に見てみましょう。
まず、慰謝料の計算は、総治療期間と実通院日数×2のどちらか少ない方に4300円を掛けたものですが、今回は180日と80日×2=160日を比べると160日のほうが少ないので、4300円×160日=68万8000円となりそうです。
ところが、治療費が80万円かかっており、120万円-80万円=40万円ですので、慰謝料は上記の計算どおりは出ず、40万円が限度となってしまいます。
このように、自賠責保険は「上限120万円」という枠があるので、治療費がかさめばかさむほど実際にもらえる損害賠償金は少なくなってしまうという事態が起こります。
次回は、「弁護士基準(裁判所基準)」についてお話しいたします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(保険会社提示の示談書)
ついこの前まで暑かったのに、東京ではこのところ急に冷え込む日が増えてきました。
毎年この時期になると、出勤時に何か羽織るべきか、それとも薄手のニットを着るかなど悩んでしまいます。
前々回まで、示談に関するお話として、「絶対に示談書は焦って返送してはいけない。」ということお話しさせていただきました。
今回は、「相手方保険会社が提示してくる示談書の金額はなぜ低いのか。」についてお話しいたします。
初めに申し上げると、相手方保険会社等から提示される示談書に記載されている損害額の算定は、多くの場合弁護士基準(裁判所基準)で計算しなおすと増額が可能です。
(通院回数が数回程度しかない場合、過失割合が非常に大きい場合、治療中にまた別の事故に遭ってしまった場合などは、例外的にあまり上がらないケースもあります。)
このように聞くと、「計算しなおすと損害額を増額できるということは、保険会社は違法な低い金額を提示しているのか?」と憤慨されるご相談者様はたくさんいらっしゃいます。
実を言うと、確かに保険会社の提示する金額は適正金額よりも低いことが多いですが、それが直ちに違法というわけではないのです。
原動機付自転車や自動車による事故の場合、自動車損害賠償保障法(自賠法)によって最低限度の支払基準(いわゆる「自賠責基準」です)が定められており、それを下回る基準での支払いは違法となります。
一方で、自賠責基準と同じかわずかでも上回ってさえいれば、「適正な金額」ではなくても「違法な金額」ではないので、営利企業である保険会社は少しでも損害賠償金の支払い金額を減らすべく、その間を狙って示談を求めてくるというわけなのです。
次回は、この最低限の基準である「自賠責基準」について詳しくお話しします。