あけましておめでとうございます。
皆様は初詣にはどこか行きましたでしょうか。
去年は新型コロナウイルスの影響もあり、混み合いそうな初詣はなしにしたのですが、今年はせっかくだからと元旦に近所の神社へお参りに行きました。
元旦も、いつもの冬の早朝も同じはずなのに、なぜか空気が澄んでいるような気がしますよね。
前回に引き続き、今回も弁護士基準についてお話しさせていただきます。
弁護士基準と自賠責基準で計算方法や基準が大きく違う項目として、①入通院慰謝料、②後遺障害慰謝料、③後遺障害逸失利益、④死亡慰謝料、⑤死亡逸失利益、が挙げられます。
今回は、①入通院慰謝料を取り上げたいと思います。
①の入通院慰謝料は、自賠責基準とは異なり、一日あたり何円という計算ではなく、総入通院期間で計算します。
そして、通院1か月で○○円、2か月で○○円といった表があり、怪我の程度によって別表Ⅰと別表Ⅱという表を使い分けます。
原則として別表Ⅰを用いますが、むちうちで他覚所見がない場合や、軽い打撲、軽い挫創の場合は別表Ⅱを用います。
この表の金額はあくまで目安なので、怪我の部位や程度、事故の悪質性によって増減しますし、総通院期間は長いけれどもほとんど通院していないという場合は、別表Ⅰ該当のケースでは実通院日数の3.5倍、別表Ⅱ該当のケースでは実通院日数の3倍を通院期間とみなすこともあります。
先ほど、別表Ⅰと別表Ⅱの表の使い分けのところで、「むちうちで他覚所見がない場合」という例を挙げました。
次回は、このことについてお話しさせていただきます。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(弁護士基準①)
12月は師走といいますが、この時期は保険会社も年内に示談をまとめてすっきりしたいからか、交渉が進むテンポが比較的速く、電話もひっきりなしに掛かってくるため、弁護「士」も事務所の中を駆け回って大忙しです。
さて、前回は損害賠償金の「自賠責基準」についてのお話をいたしました。
今回は、「弁護士基準(裁判所基準)」についてお話しいたします。
まず、弁護士基準とは、弁護士が代理人として相手方保険会社と交渉する際に用いられる基準です。
裁判になった場合に裁判所が用いる基準と同じことから、裁判所基準とも呼ばれます。
基準自体は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)と呼ばれる、過去の裁判例を集積して作成された算定基準が記載された本に基づいています。
この本自体は、発行元である日弁連交通事故相談センター(東京の弁護士会館にあります)で誰でも購入することができますし、どうやらフリマサイトなどでも売っている方がいらっしゃるようですので、一般の方も入手自体は可能です。
そのため、これを用いて弁護士でない一般の方が交渉してもよさそうですが、なぜかどの保険会社も「弁護士基準で主張したいなら弁護士を入れるか裁判を提起するかどちらかにしてください。そうでなければ交渉できません。」と言ってきます。
長年交通事故の案件を取り扱っていますが、一般の方で弁護士基準を用いて交渉に成功したという話は残念ながらまだ聞いたことがありません。
(弁護士が事故の当事者なら弁護士基準で交渉できるのでしょうか?私は幸いにも弁護士になってからはまだ事故に遭っていないので、試してみたことはありません。)
次回は、弁護士基準と自賠責基準でどのような項目の金額が変わるのかについてお話しいたします。
今年も当ブログをお読みいただきありがとうございました。来る年もどうぞよろしくお願いいたします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(自賠責基準)
弁護士の田中です。
最近は、換気のために開けてある窓からの風が寒くてなかなかつらいです。
よく冷え性といえば女性というイメージがありますが、男性でも寒いものは寒いです(笑)。
前回は、相手方保険会社が提示する金額は「最低限」の基準である自賠責基準よりも高いが、決して「適正」な基準ではないということをお話しさせていただきました。
今回は、自賠責基準の内訳についてお話しいたします。
インターネットなどで「自賠責基準」などと検索すると、大抵以下のようなことが書かれています。
〇傷害(けがのみ、後遺障害なし)の場合120万円
〇慰謝料は入通院一日につき4300円(事故日が2020年3月31日以前の場合は4200円)
(これ以外にも、休業損害についての定めや、後遺障害が認定されたときの金額、死亡した場合の金額などもありますが、ここでは割愛します。)
このような記載をご覧になった方から、「自賠責基準で計算するともっと高くなるはずなのに、相手方保険会社からの提示が低い。ごまかされているのではないか。」というご相談をいただくことはよくあります。
実は、上記記載自体は正しい情報なのですが、これには少し足りない情報がありますので、例を挙げながら説明させていただきます。
まず、傷害のみの場合、支払われる損害賠償金の総額は上限120万円ですが、これには治療費も含まれています。
治療費は、相手方に保険会社がついている場合は、大抵の場合保険会社から病院へ直接支払われますので、治療費を被害者(患者)が立て替えているなどの例外的な場合を除き、治療費分はこの120万円から差し引かれます。
そして、慰謝料は通院一日4300円ですが、通えば通うだけ慰謝料額が増えるというものではなく、実通院日数の2倍と総治療期間のどちらか少ないほうに4300円を掛けたものが慰謝料となります。
さらに、先ほどの「上限120万円」と治療費との兼ね合いで、もし治療費が高額になっていた場合は、慰謝料が上記の計算式どおりに支払われないこともあります。
ここで、
・総治療費80万円
・総治療期間6か月(180日)、実通院日数80日
・その他の項目はなし
のケースを例に見てみましょう。
まず、慰謝料の計算は、総治療期間と実通院日数×2のどちらか少ない方に4300円を掛けたものですが、今回は180日と80日×2=160日を比べると160日のほうが少ないので、4300円×160日=68万8000円となりそうです。
ところが、治療費が80万円かかっており、120万円-80万円=40万円ですので、慰謝料は上記の計算どおりは出ず、40万円が限度となってしまいます。
このように、自賠責保険は「上限120万円」という枠があるので、治療費がかさめばかさむほど実際にもらえる損害賠償金は少なくなってしまうという事態が起こります。
次回は、「弁護士基準(裁判所基準)」についてお話しいたします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(保険会社提示の示談書)
ついこの前まで暑かったのに、東京ではこのところ急に冷え込む日が増えてきました。
毎年この時期になると、出勤時に何か羽織るべきか、それとも薄手のニットを着るかなど悩んでしまいます。
前々回まで、示談に関するお話として、「絶対に示談書は焦って返送してはいけない。」ということお話しさせていただきました。
今回は、「相手方保険会社が提示してくる示談書の金額はなぜ低いのか。」についてお話しいたします。
初めに申し上げると、相手方保険会社等から提示される示談書に記載されている損害額の算定は、多くの場合弁護士基準(裁判所基準)で計算しなおすと増額が可能です。
(通院回数が数回程度しかない場合、過失割合が非常に大きい場合、治療中にまた別の事故に遭ってしまった場合などは、例外的にあまり上がらないケースもあります。)
このように聞くと、「計算しなおすと損害額を増額できるということは、保険会社は違法な低い金額を提示しているのか?」と憤慨されるご相談者様はたくさんいらっしゃいます。
実を言うと、確かに保険会社の提示する金額は適正金額よりも低いことが多いですが、それが直ちに違法というわけではないのです。
原動機付自転車や自動車による事故の場合、自動車損害賠償保障法(自賠法)によって最低限度の支払基準(いわゆる「自賠責基準」です)が定められており、それを下回る基準での支払いは違法となります。
一方で、自賠責基準と同じかわずかでも上回ってさえいれば、「適正な金額」ではなくても「違法な金額」ではないので、営利企業である保険会社は少しでも損害賠償金の支払い金額を減らすべく、その間を狙って示談を求めてくるというわけなのです。
次回は、この最低限の基準である「自賠責基準」について詳しくお話しします。
ハイビームを使用しての走行について
9月になり、日没が早くなってきましたね。
東京だと、最近は17時過ぎるとかなり暗くなってしまうので、業務に集中していてふと外を見るともう真っ暗で驚くことがよくあります。
実は、9月以降は8月までと比べ、夕方以降の交通事故の件数が急増するそうです。
日没時間が早まることで、視界が悪くなる時間と通勤通学の帰宅時間が重なることが要因の一つのようです。
夜間の視界確保のためには早めのヘッドライト点灯が重要ですが、令和2年4月から乗用車の新型車はオートライトが義務化されるようになりました(それ以前の車両についてはそのままです。)。
これまでもオートライト機能が搭載されている車両は多かったのですが、どれくらい暗くなるとオートライトで点灯するかは車種によりまちまちだったところ、上記義務化で周囲の明るさが1000ルクスを超えると自動的にヘッドライトがつくようになりました。
1000ルクスとは、晴天時の日没15分程前の明るさとされており、一般的にはまだヘッドライトを付ける必要はないと感じるドライバーが多いくらいの明るさです。
しかし、ヘッドライトがついているとドライバーの視界の確保だけでなく、対向車や歩行者などからの視認性が非常に高まりますので、事故の回避に非常に役立ちます。
また、ロービームではなくハイビームを点けることも、視界の確保と視認性の向上に役立ちます。
平成29年の道路交通法改正で、夜間(日没から日の出まで)は、歩行者や対向車がいるときと、ほかの車両の後ろを走るとき以外はハイビームを点けなければならないとされており、ハイビームであれば100メートル先まで照らすことができますので、視界が悪くなる時間の事故を回避できる可能性が高まります。
ハイビームは眩しいと嫌がられることもありますが、事故防止のためにも暗い道では積極的に使用するようにしましょう。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント13(示談までの流れ)
かなり暑い日が増えてきて、暑いのが苦手な私に厳しい季節がやってきました。
弁護士法人心の池袋駅法律事務所は池袋駅からすぐ近くで、かつ地下道を通れば直射日光も避けられるので、通勤はだいぶ楽なのですが。
前回は、「絶対に示談書は焦って返送してはいけない。」ということをお話しさせていただきました。
今回は、どうして示談書に納得しないまま示談書を返送してしまうのか、その原因について考えてみたことをお話しいたします。
弁護士に依頼せず、被害者ご本人で相手方保険会社とやり取りをしていらっしゃる場合、治療終了又は後遺障害の結果通知から約一か月後を目安として、相手方保険会社から連絡書とともに示談書と損害額の内訳が書かれた書類が送られてきます。
損害額の内訳には、交通費や治療費、傷害慰謝料といった項目ごとの金額が記載され、備考欄には「弊社基準にて計算いたしました。」、「自賠責基準と比較して、高い方を採用いたしました。」などの記載とともに、通院日数等に応じたよく分からない計算式が載っていることがほとんどです。
そして、連絡書には、示談書を〇月〇日までに署名捺印して返送すること、この損害額の計算は今回の示談限りであり、納得しないなら裁判ではこれより低い金額しか提示しない可能性もあること等が記載されています。
この連絡書の記載を読むと、一般の方の中には「この提示された金額で示談しないと、損害賠償金がもらえなくなったり、または裁判になって余計に損をしてしまったりするかもしれない。提示の内容を見る限り、よく理解はできないが何らかの根拠に基づいてきちんと計算してあるようだし、早く示談したほうがいいのかもしれない。」と考えてしまう人も少なからずいるのではないかと思います。
ところが、示談書を期限内に返送しなくても、消滅時効に掛からない限り、損害賠償金を受け取ることができます。
(交通事故で怪我をしたことに対する損害賠償金の時効消滅は、症状固定日から5年ですが、症状固定日については治療の必要性や相当性の観点からのちに争われて前倒しになることがありますので、念のため事故日から5年と数えておくと安心です。)
この期限は、相手方保険会社の担当者が、早く案件を終わらせたいがために設定しているだけですので、法的には何の意味もありません。
ですので、相手方保険会社が指定した期限は無視していただいて構いませんし、担当者から急かされたとしても、「今検討中です。」とだけ返答していただければ、(年単位で放置している等でなければ)基本的には問題ありません。
ところが、焦って示談書を相手方保険会社に返送してしまうと、いくら後から「そんなつもりじゃなかった!」と言って担当者に抗議しても、それを覆すことは困難です。
当法人にいただくご相談にも、返送してしまった示談書を撤回したいといったものが年に何件かございますが、事情をお伺いする限り撤回できないケースであることがほとんどです。
ですので、もし提示された金額に少しでも疑問点があるのであれば、弁護士に一度ご相談ください。
当法人は、「示談金チェック」として、相手方保険会社から提示された損害賠償額が適正かどうか、無料でお調べすることができます。 お調べした結果、ほとんど上昇の見込みがないか、弁護士費用の観点から見てプラスにならない場合は、その旨正直にお伝えさせていただきますので、少なくとも相談して損をすることはありません。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント12(示談までの流れ)
最近はだいぶ蒸し暑い日も増えてきましたね。
昨年の東京の梅雨明けは8月1日でしたが、例年は7月中に梅雨明けとなることが多いですので、早く明けてほしいなと思う今日このごろです。
前回は、「後遺障害の異議申立ては、やったほうがよい場合とそうでない場合があり、できれば弁護士へご相談をお勧めする。」とお話しいたしました。
今回は、その後のステップである、示談についてお話しいたします。
治療終了、または症状固定となり後遺障害につき適切な認定がされたとなると、後は相手方と損害賠償額の交渉を残すのみとなります。
相手方保険会社とのやり取りについて、これはやってはいけないといったことはたくさんお話ししてきましたが、今回の事項はその中でも最も重要です。
それは、「絶対に、示談書は焦って返送してはいけない。」ということです。
これまでにお伝えした「やってはいけないこと」は、もちろん内容によりますが、弁護士にご相談いただければ何かしら次善策を取ることができるものもあります。
ところが、示談書を返送してしまうと、ごくごく例外的な場合を除き、弁護士でもそれを覆すことはできないと思っていただいた方がよいかと思います。
これを見て、約半数くらいの方が、「なんだそんなことか。自分は内容をよく読んで、きちんと納得してから示談するから問題ない。」と思われたのではないでしょうか。
しかし、実際に保険会社から示談書が送られてくると、金額が適正なのかどうかよく分からないまま、何となく納得して示談書にサインしてしまう人や、示談書に同封された連絡書を見て焦って示談書を返送してしまう人は非常に多いのです。 なぜ、このようなことが起きてしまうのか、これまでに私にご相談いただいた方のお話から考えてみましたので、次回はそれをお伝えしたいと思います。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント11(後遺障害異議申立て)
そろそろ梅雨入りの時期ですね。
弁護士として東京地裁やその他いろいろな地域の裁判所に出向くことはよくあるのですが、資料をたくさん抱えているときに傘を差すのは大変なので、そういう日はなるべく晴れていてほしいなと思っています。
前回は、「後遺障害認定結果に書いてあることの意味」について、一例をご紹介しました。
今回は、「後遺障害の異議申立て」についてお話しします。
異議申立てとは、後遺障害の認定結果に納得がいかない場合に、再度等級認定を求める手続きのことです。
この異議申立ての手続き自体は何度もでき、それ自体には費用もかかりません。
ですが、初回の申請と同じ資料で何度も申立てを行っても、結局同じ結果となる可能性が非常に高いです。
そのため、認定結果の別紙に記載された書面の内容から、前回の申請で何が不足していたか、どのような資料を付加すればその不足を補えるかを検討し、異議申立てに臨むことが大切です。
例えば、初回に提出した後遺障害診断書に不備があったり、本来すべきである検査をしていなかったりという場合は、それらを補うことで適切な判断がなされる可能性があります。
また、申請書類に不備や抜けがなかったとしても、初回の申請を相手方保険会社に任せていた場合(事前認定)は、資料を追加したうえで異議申立てをすることで、適切な判断がなされる可能性もあります。
一方で、病院にほとんど行っていない場合や通院期間が短すぎる場合、事故が非常に軽微な場合(過去のブログ記事も参照ください。)などは、仮に異議申立てをしたところで可能性は乏しいということになりますので、あくまでご自身の判断とはなりますが、異議申立てをせず損害額の交渉に移った方が時間の無駄にならないということになります。
もっとも、異議申立てをすべきかどうかは、ご自身での判断が難しいかと思われますので、当法人へご相談いただくことをお勧めいたします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント10(後遺障害認定結果の読み方)
交通事故の案件を集中的に取り扱う、弁護士の田中です。
大変ありがたいことに、北は北海道から南は沖縄まで、毎日たくさんのご相談、ご紹介をいただき、現在は年間300件以上の交通事故の案件を取り扱っています。
そんな日々の業務で、ご相談いただく前に知っておいていただけたらもっとよい結果になったかもしれないのに、と思うことや、意外とこういったことは知られていないんだな、と思うことが非常にたくさんあります。
そこで、交通事故の被害に遭ってしまった方も、そうでない方も、交通事故で後悔しないために皆様へぜひ知っておいていただきたいことをお話させていただきます。
前回は、「後遺障害申請をしてから認定されるまでに要する時間」として、「おおよその目安として最短で1か月半、長いと半年程度」とお話ししました。
今回は、「後遺障害認定結果に書いてあることはどういう意味か」についてお話しします。
後遺障害申請を行うと、相手方自賠責保険会社から「後遺障害等級結果のご連絡」といった書面(このタイトルは保険会社により若干異なります。)がご自宅に届きます。
この書面は、1枚目に後遺障害に該当するかどうか、該当するとして等級は何かが記載され、2枚目以降の別紙にそのような判断となった理由が記載されています。
しかし、この理由の記載はテンプレートのようなものであることが多く、なぜ該当または非該当なのか、詳しい内容が記載されているわけではありません。
しかし、いくつか記載のパターンは分かれていますので、大まかですがどのような意味なのかは分かります。
例えばむちうちで後遺障害非該当となった場合に一番多いパターンが、「他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられないことに加え、その他症状経過、治療状況等も勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いことから、自賠責保険(共済)における後遺障害には該当しないものと判断します。」という記載です。
この記載の場合、誤解を恐れずにごく簡単に言い換えると、「自覚症状と合致する他覚所見はないから12級13号には該当せず、では14級9号に該当するかというと、通院の頻度や治療内容その他を見てもそこまで重傷ではなさそうだから、今の症状は(一生残ることが前提の)後遺障害というほどではなく、時間が経てばじき治る程度のものだと思います。」という意味になります。
非該当となった結果に納得がいかない場合は、「異議申立て」という手続きを取ることができます。 次回は、この異議申立てについてお話しします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント9(後遺障害申請の手続き)
弁護士法人心の池袋法律事務所で所長弁護士をしている、弁護士の田中です。
年間で300件以上の交通事故の案件を集中的に取り扱っている経験から、交通事故に関して皆様へぜひ知っておいていただきたいことをお話させていただきます。
前回は、「後遺障害申請のための資料収集にかかる時間」として、「診断書等の作成のため、最短でも症状固定日の翌月末までは待つ必要がある」とお話ししました。
今回は、「後遺障害申請にはどれくらい時間がかかるのか」その2として、申請してから認定されるまでにかかる時間と手続きについてお話しします。
申請書類は、まず相手が加入する自賠責の保険会社(相手方の任意保険会社とは別)へ送られ、必要書類が整っているかどうか確認されたのちに自賠責損害調査事務所へ送られます。
自賠責損害調査事務所は、全国計54か所もあり、その上には全国7か所の地区本部、そのまたさらに上には東京に本部があります。
調査事務所では、申請書類に基づいて事故発生状況、自賠責保険の対象となる事故かどうか、傷害と事故との因果関係の有無、後遺障害の該当性などの調査がなされます。
一般的なむちうちの案件の場合、調査にかかる期間はおおよそ1~3か月程度となることが多いですが、繁忙期にはそれより長く掛かる場合もあります。
また、案件によっては地区本部や本部に移送されて判断がなされることもあり、その場合はプラス1~2か月ほど掛かることが多いです。
地区本部等に移送される案件は、等級認定に難しい判断が要求されるため調査事務所では判断ができない案件とされていますが、移送されたから後遺障害等級認定は難しいといったことは決してありません。
実際に、私が担当した案件で地区本部での判断となり、結果として等級が認定されたものが何件かあります。
認定結果が出たら、調査事務所から自賠責の保険会社へ認定結果が送られ、等級が認定された場合はその等級に対応する保険金(例えば、14級なら75万円)は支払われたうえで、認定結果が書面で送付されます。
したがって、後遺障害申請から認定結果が届くまでの期間は、最短で1か月半程度、長ければ半年程度かかることになります。 次回は、後遺障害の認定結果が出たらどうすべきかについてお話しします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント8(後遺障害申請の手続き)
3月は、毎年交通事故が多い傾向にあると言われています。
師走ほどではないにせよ、年度末ということで慌ただしくなってしまうからでしょうか。
例年とは違い、最近では新型コロナウイルスの影響で対面での挨拶回りなどは減っているようですので、交通事故で大変な思いをされている方のご相談にたくさんのってきた弁護士としては、今年は交通事故件数が少なくなってほしいと思います。
前回は、「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと」として、「ごく軽微な事故の場合は、後遺障害として認定される可能性が極めて低い。」とお話ししました。
今回は、「後遺障害申請にはどれくらい時間がかかるのか」その1として、まず申請のための資料収集にかかる時間についてお話しします。
後遺障害申請に最低限必要な書類については、私の過去のブログ(交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害)2)でお話しました。
そのうち、⑤自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書と、⑥事故で通院したすべての医療機関の診断書,診療報酬明細書については、病院が作成する書類であるため、取り付けに時間を要する場合があります。
後遺障害診断書は、症状固定となった時点で医師に白紙の後遺障害診断書用紙を渡して記載をお願いすることになります。
かかる費用と期間は病院によりそれぞれですので、具体的には直接病院に確認していただくことをお勧めいたしますが、一般的には料金は5000円から1万円、期間は2週間から1か月程度のところが多いようです。
なお、この後遺障害診断書の費用は、後遺障害が認定された場合に限り相手方に請求することが可能です。
経過診断書及び診療報酬明細書とは、病院が保険会社に対し毎月提出する、通院の経過や症状の内容、診療内容とそれに対応する報酬について記載された書面です。
これらは、交通事故の治療で通院したすべての病院につき、初診から症状固定日までのすべての期間につき必要となりますが、上で述べたように通常は保険会社が原本を持っているので、その写しを保険会社から取り寄せる必要があります。
その月の経過診断書等は翌月の半ば頃に保険会社へ提出する病院が多いので、早ければ症状固定日の翌月末には保険会社から取り寄せることが可能ですが、中には数か月掛かってようやく出してくるズボラな病院もあります。
そういった場合、病院に対して早く出してほしいと催促することは可能ですが、こちらが高圧的な態度を取ったことで診断書に適当な記載をされても困りますので、運悪くズボラな病院に当たってしまった場合は、やんわりと頻繁に催促するしかないというのが実情です。
このように、後遺障害申請書と経過診断書、診療報酬明細書のすべてが揃うのは、最速で症状固定日の翌月末、遅いと2か月ほど掛かることになります。 次回は、申請してから認定結果が出るまでの期間と行われる手続きについてお話します。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害)7
警察庁の統計によると、2020年の交通事故死者件数は、統計の記録が残っている1948年以降最少の2839人となったそうです。
一方で、東京では前年度より22人増え、53年ぶりに全国ワースト1位となりました。
最近、休日に公共交通機関ではなく自転車を使用することも多いので、私自身も気を付けたいと思います。
前回は,「通院期間が短すぎる場合,後遺障害として認定される可能性は低い。」とお話ししました。
今回は,「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと(要件その2)」として,前回に引き続き,むちうちにおいて後遺障害が認定されにくいケースについてお話しします。
むちうちで後遺障害が認定される可能性が極めて低いケースの3番目が,事故形態がごく軽微というケースです。
具体的に言うと、細い道での対向車同士のミラー接触や、駐車場内での逆突といった事故の場合、それによって生じたむちうちは後遺障害として認定されないことが非常に多いです。
むちうちは他覚的所見がない(画像や神経学的検査などで痛みの原因がはっきりと表れない)場合が多いため,どの程度通院しており,その際のどのように患者が痛みを訴えているかといった事情と合わせて、どの程度の大きさの事故であったのかといった外形的事情も参考にされます。
これは、事故が大きければ大きいほど怪我の程度が大きくなることが多いため、ある程度大きな事故であれば後遺障害として一生残存するほどの症状である可能性があるという経験則に基づくものです。
その点、上に挙げたミラー接触や逆突は、一般的にごく軽微な事故に分類されるものであり、よほどのことがない限りそれらの事故によって大きな怪我をするとは考えにくいため、後遺障害として認定されない方向に働く一事情となります。
このような場合、特に事前認定(相手方保険会社に後遺障害申請をしてもらうことを言います。事前認定について詳しくは「交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害)3」をご参照ください。)では、ほぼ認定は見込めません。
当法人へご相談いただいた場合は、具体的な症状も含めて資料を確認させていただき、これまでの豊富な経験から後遺障害申請をした場合の見通しなどを詳しくお話させていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。 次回は、後遺障害を申請する場合のタイムスケジュールなどについてお話します。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害)6
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
これまで交通事故の案件を数百件以上集中的に取り扱ってきた弁護士として,交通事故の被害に遭ってしまった際に後悔しないために,皆様へぜひ知っておいていただきたいことをお話させていただきます。
前回は,「ほとんど病院に行っていないや間隔が空きすぎている場合は,後遺障害として認定される可能性は低い。」とお話ししました。
今回は,「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと(要件その2)」として,前回に引き続き,むちうちにおいて後遺障害が認定されないケースについてお話しします。
後遺障害が認定される可能性が極めて低いケースの2番目が,事故から症状固定までの期間が半年以下というケースです。
むちうちについては,最低でも半年以上は通院しているような重症のケースでなければ,その後もずっと残存する後遺障害とは認定されにくいのです。
ところが,相手方保険会社の担当者の中には,症状固定を早めて治療費を抑え,かつ被害者を無理やり納得させるために,「○○さんの怪我は重症だから,早めに後遺障害の申請をしましょう。後遺障害として認定されれば,その分の保険金が出るので安心ですよ。」などと言って,事故から4か月程度で医師に後遺障害診断書を書かせるといった手法をとる方がいらっしゃるようです。
実際は,上で述べたとおり,4か月程度の通院ではむちうちで後遺障害と認定される可能性はほぼありませんが,非該当として結果が帰ってきても,担当者は「自分としては絶対に認定されると思っていたが,これは自賠責の判断なので何ともできない。」などと責任を逃れることができます。
さらに,この段階で被害者の方が弁護士にご相談いただいても,医師によって症状固定日が後遺障害診断書にすでに記載されているため,これを覆すことは非常に困難となり,泣き寝入りをするしかないという状況になります。
そのため,後遺障害を申請するかしないかにかかわらず,通院時にこのようなことを事前に知っておかないと,いざ後遺障害を申請したいと思っても,申請するだけ無駄という状況になりかねません。
当法人では,ホームページ等で,事故に遭ったらとにかくすぐ弁護士へご相談いただくようお勧めしておりますが,それはこのような被害者が泣き寝入りとなってしまう悲しい事態を防ぐという意味があるのです。
もっとも,事前にこういったリスクについて知らなければ,そもそも弁護士に相談する必要性を感じない方がほとんどかと思います。 私のブログが,皆様にとって何らかの知識・情報提供となり,一人でも多くの交通事故被害者の方が理不尽な思いをしない世の中になれば幸いです。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害)5
弁護士として,これまで交通事故の案件を数百件以上集中的に取り扱ってきた経験をもとに,交通事故の被害に遭ってしまった際に後悔しないために皆様へぜひ知っておいていただきたいことをお話させていただきます。
前回は,「むちうちで後遺障害が認定されるかどうかは見極めが困難である。」とお話ししました。
今回は,「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと(要件その1)」として,むちうちにおいて後遺障害が認定されないケースについてお話しします。
まず,後遺障害が認定される可能性が極めて低いケースとして代表的なものが,ほとんど病院に行っていないケースです。
初診の病院があまり治療に積極的でない所だった場合,「痛み止めを出すので自宅で安静にしていてください。」とだけ言われ,医師の指示どおり特に通院することなく,何か月も痛み止めだけを飲んで安静にしていたという方もいらっしゃるようです。
そういった方が,「痛みが残っているから後遺障害として申請したい。」と考えたとしても,非該当(後遺障害として認定されない)という結果に終わる可能性が非常に高いです。
なぜなら,むちうちは他覚的所見がない場合が多い(画像や神経学的検査などで痛みの原因がはっきりと表れない)ため,どの程度通院しており,その際のどのように患者が痛みを訴えているかという事情が,後遺障害に該当するかの判断において重要となるところ,通院していなければそのような材料がほとんど出てこないからです。
また,定期的に通院はしていても,通院の間隔が一か月以上空いてしまっている場合や,事故から一か月以上後になってから通院を開始した場合は,そもそも事故と症状との因果関係がないとして,後遺障害に当たらないと判断される可能性が高いといえます。
次回も,「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと(要件その2)」として,引き続きむちうちにおいて後遺障害が認定されないケースについてお話しします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害)4
弁護士として交通事故の案件を数百件以上集中的に取り扱ってきた経験をもとに,交通事故の被害に遭ってしまった際に後悔しないよう,皆様へぜひ知っておいていただきたいことをお話させていただきます。
前回は,「後遺障害を申請する際は,被害者請求の方法で行うべきである。」とお話ししました。
今回は,「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと(認定の実態)」についてお話しします。
交通事故で怪我をされた方の多くは,頚椎捻挫や腰椎捻挫,外傷性頚部症候群といった,いわゆるむちうちといわれる症状に苦しんでいます。
そして,このような症状の場合,認定される可能性のある後遺障害は14級9号が12級13号のどちらかですが,ここ最近は認定のハードルがかなり上がっているため,通院時からしっかり準備しておかなければむちうちで後遺障害が認定されること自体かなり困難というのが現状です。
当法人には,自賠責調査事務所で長年後遺障害の認定にかかわっていたスタッフが在籍しているため,どのようなポイントが認定に必要かといった内部事情にかなり精通しています。
そのため,私がご依頼を受けた場合には,後遺障害が認定される確率を高めるためのアドバイスをさせていただいております。
もっとも,「こうすれば必ず認定される。」という魔法の道具のようなものはありません。
むちうちの場合,自賠責調査事務所の担当者によって,認定されるかどうかその匙加減が大きく変わってしまうからです。
よく,被害者の方から,「後遺障害が認定される確率は何パーセントくらいでしょうか。」と聞かれることがありますが,認定されないケースかどうかの判断は非常に高い確率でできても,認定されるケースかどうかという判断はできないというのが正直なところです。
次回は,「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと(要件その1)」として,「むちうちにおいて後遺障害が認定されないケースとはどのようなものか。」についてお話しします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害)3
弁護士として交通事故の案件を数百件以上集中的に取り扱ってきた経験をもとに,交通事故の被害に遭ってしまった際に後悔しないよう,皆様へぜひ知っておいていただきたいことをお話させていただきます。
前回は,「後遺障害申請に最低限必要な書類は決まっているが,それ以外に補足書類を付けて出すことは制限されていない。」とお話ししました。
今回は,「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと(申請方法)」についてお話しします。
そもそも,後遺障害の申請には,方法が二つあります。
一つは,相手方保険会社が被害者に代わって申請を行う「事前認定」,もう一つが被害者やその代理人(弁護士など)が申請を行う「被害者請求」です。
前回,後遺障害申請に必要な書類をお話ししましたが,もし「事前認定」で申請を行う場合は,被害者が書類を揃える必要はほとんどありません。
そのように聞くと,「事前認定のほうが楽そうだから,わざわざ手間をかけて被害者請求をするメリットはないのではないか。」と思われるかもしれませんが,事前認定には次のようなデメリットがあります。
それが,「事前認定の場合,どういった補足資料を添付されるか確認できない。」という点です。
前回お話ししたとおり,後遺障害申請に最低限必要な書類は決まっていますが,それ以外に資料を出してはいけないわけではありません。
相手方保険会社としては,もし後遺障害が認定されれば,それに伴って支払うべき損害賠償金が増えることになりますので,申請に際してできるだけ認定されないように働く可能性があります。
例えば,相手方保険会社が主治医に医療照会して得た回答書のうち,被害者に不都合な部分をマーカーで強調して出したり,担当者と被害者との電話での内容を一部切り取って,後遺障害認定に不利な事情として出したりすることが可能なのです。
一方で,被害者請求の場合は,必要であれば事故の大きさを示す資料(損傷した車両の写真や修理代明細など)や病院で取り付けたカルテなどを,有利な資料として添付することができます。
したがって,後遺障害を認定してもらう可能性を少しでも高めたいのであれば,申請を相手方保険会社に任せるのではなく,被害者請求を行うべきであり,治療終了時に相手方保険会社に対し「後遺障害申請は被害者請求で行います。」と伝えておくことが必要です。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害)2
これまでに,交通事故の案件を数百件以上集中的に取り扱ってきた弁護士が,もし交通事故の被害に遭ってしまった場合のために,後悔しないように皆様へぜひ知っておいていただきたいことをお話させていただきます。
前回は,「後遺障害とは,自賠責で認定されたもののみを指す用語で,後遺症とは違う」とお話ししました。
今回は,「後遺障害として認定してもらうために必要なもの」についてお話しします。
後遺障害の申請をするためには,まず申請書類をそろえる必要があります。
具体的には,
① 自動車損害賠償責任共済支払請求書兼支払指示書
(請求者や相手方の氏名,相手方の自賠責保険証明書番号等を記載するもの)
② 申請者の印鑑証明書
(①には印鑑登録された印で捺印する必要があるためです。)
③ 交通事故証明書
(自動車安全運転センターで発行してもらうもので,郵便局,各都道府県の自動車安全運転センター窓口,インターネットで申し込みができます。)
④ 事故発生状況報告書
(事故現場の状況を簡単な図と文章で表したもの)
⑤ 自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書
(指定の書式で,主治医に記載してもらうものです。)
⑥ 事故で通院したすべての医療機関の診断書,診療報酬明細書
(指定の書式のもので,相手方保険会社が治療費を支払っている場合はその保険会社が原本を持っていて,要求すれば基本的に写しをもらうことができます。)
となります。
⑦ 事故で撮影したレントゲン等の画像資料
(申請時に画像資料を送っていなくても,後から「〇〇病院で撮影した画像を送ってください。」という依頼が自賠責調査事務所から来ますので,その際に取り付けて送っても構いません。前者の方が手続きは早く進みますが,後者の場合は取り付けに要した費用が後に自賠責調査事務所から支払われます。)
となります。
ここで重要なのが,上記①~⑦までの資料はあくまで「最低限必要な書類,資料」であり,それ以外の補足資料を付けることは制限されていないということです。
次回は,このことと関連して,「後遺障害として認定してもらうために注意すべきこと」についてお話しします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべきポイント(後遺障害)1
交通事故の案件を集中的に多数取り扱ってきた弁護士が,交通事故の被害者となってしまった場合のために,後悔しないように皆様へぜひ知っておいていただきたいことをお話させていただきます。
前回は,「相手方保険会社の担当者と話す際には注意しつつ,正確な情報を適時伝えることが重要である。」とお話ししました。
今回は,「後遺障害とは何か,後遺症との違い」についてお話しします。
主治医や相手方保険会社担当者との話し合いにより,適切な期間の治療を認めてもらい,怪我が幸いにも完治した場合はよいのですが,怪我の内容や程度,被害者のご年齢等の事情で,これ以上治療してもよくならず,今後も持病として症状が残存してしまうことがあります。
この残存してしまった症状のことを,一般的に「後遺症」と呼びます。
そして,自動車事故による怪我で後遺症が残った場合に,相手方加入の自賠責保険会社に対して「後遺障害」の申請をし,認定を求めることができます。
このように,「後遺症」と「後遺障害」は,言葉はよく似ていますが,前者は症状が残っていることを指す一般的な用語であり,後者は自動車事故による「後遺症」のうち,自賠責の審査を経て認定されたもののみを指しますので,厳密には違いがあります。
しかし,この違いについて医師もよく分かっていないことがまれにあり,患者さんに正確に説明できなかったために,「医師から,『あなたの症状は後遺障害にあたる。』と言われたから,私の症状はもう後遺障害として認定されている。」と誤解していらっしゃる方もいるようです。
確かに,主治医から見て後遺症が残っていると判断されなければ,後遺障害診断書を記載してもらえませんので,医師による判断は必要不可欠です。
しかし,医師による上記診断があることは,後遺障害申請のための一要件にすぎませんので,それがあれば必ず認定されるというものではないのです。
次回は,「後遺障害として認定してもらうために必要なもの」についてお話しします。
交通事故で怪我をしたときに注意すべき通院時のポイント6
交通事故を集中的に多数取り扱う弁護士が,もし交通事故の被害に遭ってしまった場合のために,後悔しないようにぜひ知っておいていただきたいことお話させていただきます。
前回は,「相手方保険会社の担当者は,被害者の味方というわけではない。」とお話ししました。
今回は,「適切な期間の治療を認めてもらうにはどうすべきか(保険会社編後編)」として,どのように保険会社担当者と向き合うべきかをお話しします。
すでにお伝えしたとおり,相手方保険会社の担当者はその立場上被害者の味方ではなく,あくまで交渉の相手方です。
被害者としてはこのことを念頭に,ご自身の利益は自ら守るということを実践していかなくてはならないのです。
そのため,保険会社担当者との電話等は,その発言一つ一つがのちに証拠とされるという考えで行うことが必要ですので,誤解を生むような発言は気を付けていただく必要があります。
そのうえで,必要な情報(現在の症状,治療効果,主治医の見解など)や要求は,しっかりと正確に担当者へ伝えてください。
ほとんどの保険会社担当者は,自分一人で治療費支払い打ち切りを決めるのではなく,必要な情報をまとめて社内で決裁を取ってから決定します。
治療費支払いに積極的な方向の情報がなければ,治療継続の社内決裁を取ることは難しくなります。
したがって、これらの情報を適宜保険会社の担当者に伝えて、治療プランと今後の見通しを共有することで早期の治療費支払い打ち切りを防ぎ,適切な期間の通院を認めてもらいやすくなります。
また,油断すべきでないことは確かですが,一方で相手方保険会社担当者を必要以上に敵視する必要もありません。
事故は相手方保険会社担当者のせいで起こったわけではないのですから,怒りを担当者にぶつけてもしょうがないどころか,そのような態度を取っていると交渉ができなくなってしまう可能性すらあります。
このように,相手方保険会社担当者との対応は,気を付けるべき点が非常にたくさんあります。 ご自身での対応が難しいと感じたら,事態がこじれてしまう前に,お早目に弁護士へご相談いただくことをお勧めします。
【追記】
弁護士法人心千葉法律事務所がオープンいたしました。
千葉県にお住まいの方で交通事故にお困りの方は,弁護士法人心千葉法律事務所までお気軽にご相談ください。
交通事故で怪我をしたときに注意すべき通院時のポイント5
交通事故を集中的に多数取り扱う弁護士が,交通事故の被害に遭ってしまった場合に備えて,あとで後悔しないように,通院中にぜひ知っておいていただきたいことお伝えいたします。
前回は,「適切な期間の治療を認めてもらうには,医師との十分なコミュニケーションが必要である。」とお話ししました。
今回は,「適切な期間の治療を認めてもらうにはどうすべきか(保険会社編前編)」をお話しします。
よほどのズボラな担当者でなければ,通常は月に1回程度,相手方保険会社担当者が被害者に電話を掛け,今の症状などを聞いてきます。
(最近は,メールやLINEなどで連絡をしてくる保険会社もあるようです。)
担当者の中には,とても親身に相談に乗ってくれたり,事故と関係ないことも話してくれたりと,親切に感じる方も多くいらっしゃいます。
ところが,中には被害者思いなのではなく,被害者を信頼させて治療費支払い打ち切りに有利な事情を引き出そうとする担当者もいます。
例えば,「最近だいぶ暖かくなってきましたね。寒いときよりは少し楽になりましたか。」という問いかけは,体調を気遣っているのではなく,「体が良くなった。」という言葉を引き出すことが目的である可能性があります。
被害者の方としては,「前より良くなっただけで,相変わらず体に痛みはある。」というつもりで,「良くなりました。」と言ったとしても,保険会社担当者としては,「〇月〇日に被害者本人から電話で確認したところ,『体は良くなった。』と聞き取った。」という記録にしてしまい,治療費支払い打ち切りの材料としてしまうのです。
もっとも,このことで「保険会社の担当者はひどい!」というつもりはありません。
相手方保険会社はあくまで相手方が契約する保険会社ですし,さらにはボランティア団体ではなく営利企業ですので,相手方と保険会社の利益のために行動しています。
また,交通事故のような不法行為に基づく損害賠償請求は,本来であれば,その損害を被害者が主張立証しなければなりません。
つまり,被害者が何もしなくても,加害者やその保険会社が被害者の利益のために頑張ってくれ,必要な治療を受けさせてくれたり,ひいては適正な額の損害賠償金を提示してくれたりといったことは,残念ながらあり得ないのです。
では,一体被害者としてはどのように保険会社担当者と向き合う必要があるのでしょうか。
それについては,次回の「適切な期間の治療を認めてもらうにはどうすべきか(保険会社編後編)」でお話しいたします。
追記
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