「自己破産した場合の影響」に関するお役立ち情報
自己破産すると退職金を全て回収されるのか
1 自己破産をすると退職金を全て回収されてしまうのでしょうか
自己破産をした場合には、一定の財産が換価処分され、債権者に弁済・配当されることになります。
それでは、自己破産した場合の退職金はどのように取り扱われるのでしょうか。
2 すでに退職金を受け取っている場合
退職金をすでに受け取っている場合、退職金を現金として保管しているのであれば現金として扱われます。
預貯金口座で保管しているのであれば預金や貯金として扱われることになります。
そうすると、元々持っていた預貯金と同じように扱われますので、原則として借金の返済にあてられることになります。
3 まだ退職金を受け取っていない場合
勤務先に退職金制度がある場合で、自己破産の前にまだ退職していない場合や、退職はしたもののまだ退職金を受け取っていない場合には、退職金を請求することができる権利が財産として扱われます。
そして、この退職金債権は、その4分の3が差押禁止債権となりますので破産手続上も自由財産となりますが、残りの4分の1は差押えが可能ですので自由財産とはならず換価処分の対象となるのが原則です。
この退職金の金額の基準時は、破産手続開始時となります。
4 東京地裁における運用
退職金債権のうち4分の1は財産換価処分の対象となるといっても、実際には退職金がかなり高額となる場合があります。
その場合、退職金の4分の1を破産者が積立てることが難しい場合の方が多いでしょう。
そうすると、退職金がある人は自己破産できないということになってしまうおそれがあります。
そこで、東京地方裁判所では、自由財産拡張基準を設けており、退職金債権について、自由財産となる範囲を拡大する取扱いをしています。
今後退職金を受け取ることができるのがほぼ確実な場合は、自由財産の拡張はなされず、破産法の原則どおり、退職金債権の4分の1が換価処分の対象となるとされています。
他方、まだ退職をしておらず、かつ、破産手続中に退職する見込みもない場合のように、本当に退職金がもらえるのかどうかが未知数の場合、東京地裁では、自由財産拡張基準によって、退職金支給見込額の8分の7を自由財産とするという取扱いをしています。
参考リンク:裁判所・窓口案内