専業主夫の休業損害
1 家事労働について
家事は賃金の支払われない無償労働ですが、家庭内における労働力の再生産に不可欠な行為であり、交通事故により他の家族のための家事労働ができなくなった場合には、他の有償労働と同じく休業損害が発生します。
しかし、一般的な会社員のように、「仕事を休まなければ得られたであろう金額」がはっきりしているわけではないため、弁護士が介入するかどうかによって金額が大きく変わってくることがあります。
2 家事労働の休業日数
⑴ 入院していた場合
入院している場合は、当然ですが家事労働を行うことはできないので、入院した日数がそのまますべて休業日となります。
⑵ 通院のみの場合
ア ギプス固定で家事が全くできなかった場合
腕や足の骨折のためギプス固定していて到底家事ができる状況ではなく、実家にお願いして家事を手伝いに来てもらっていた等の場合は、固定期間も休業日となります。
イ 家事が一部できなかった場合
全くできないほどではないけれど、首の痛みや腕のしびれで長時間の作業や重い物を持つ動作ができず、事故前にはできていた家事の一部が一人ではできなくなってしまったという場合は、上記二つのケースのように一律に休業期間を決めることが難しいため問題となります。
一つ目の考え方としては、通院日を休業日とする方法で、これは自賠責保険における休業損害と同じ考え方です。
これは、通院日であれば診断書や診療報酬明細書に記載があり明確である一方で、家事に支障があったのは通院日に限らないことから、実態とは解離しているともいえます。
二つ目の考え方としては、怪我は治療によって段々と回復し、それに伴って家事への支障も少しずつ減少していくことから、支障の割合をパーセンテージで表し、治療の経過とともに逓減させてゆくという方法です。
これは、実態には即しているともいえますが、支障の程度を具体的に数値化するのは難しく、何らかの裏付けがなければ争いになりやすいといえます。
日々の家事の内容や怪我による具体的な支障を、簡単な日記のような形でよいので記録しておくことをお勧めします。
3 家事労働の損害額
⑴ 自賠責基準と任意保険会社基準
自賠責保険金の計算基準や、任意保険会社が提示してくる賠償額の計算基準は、一日あたり6100円(令和2年3月31日以前に発生した事故の場合は一日あたり5700円)です。
ただし、自賠責基準の場合、けがについては治療費等も合わせて120万円という上限がありますので、治療費や通院慰謝料など他の項目の合算で120万円をすでに超えている場合、休業損害はゼロという場合もあります。
⑵ 裁判、弁護士基準
裁判となった場合や弁護士が代理人として示談交渉をする場合は、厚生労働省が毎年出している「賃金センサス」の女性全年齢学歴計の金額(例えば、令和元年度の場合は一日1万0630円)で計算します。
4 家事労働の休業損害が不安な方は弁護士へ相談
専業主夫の方の休業損害は、弁護士に交渉を依頼することで適切な休業日数及び損害額を獲得できる可能性が高いといえます。
適切な額の休業損害が獲得できるか不安な方は、お気軽に弁護士法人心へご相談ください。