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労災の特別支給金について

  • 文責:所長 弁護士 田中浩登
  • 最終更新日:2023年2月27日

1 はじめに

お勤めの方が、通勤途中(帰りも含む)または勤務中に交通事故に遭った場合、交通事故の賠償金を相手方から支払ってもらうほかに、労災保険の申請をすることにより、労災保険からも、医療費、休業に対する補償及び後遺障害に対する補償を受けることがっできます。

また、休業補償及び後遺障害に対する補償については、本来の補償のほかに「特別支給金」として、上乗せの金員を受領することができます。

2 労災からの給付と、相手方からの賠償金との関係について

同じ損害について、相手方と労災保険の両方から二重に支払を受けられるものではありません。

例えば、医療費として100万円を要した場合、相手方より医療費としてすでに100万円が支払われているのであれば、労災保険からの医療費支払はありません。

労災保険も、相手からの賠償金も、いずれも事故による損害を回復することが目的であり、いわゆる「焼け太り」は認められていないためです。

このことは、休業損害及び後遺障害による損害についても同様です。

しかしながら、上記を前提としつつも、休業及び後遺障害については、本来の損害に対する支払のほかに、労災保険より特別支給金が支払われる制度が設けられています。

休業や後遺障害による損害について、仮に100万円であったとして、事故の相手方より同額が支払われた場合、労災保険からの補償金は受け取ることができません。

すでに損害金が全額支払われているためです。

しかし、この場合でも、特別支給金については、所定の金額を受け取ることができます。

これは、特別支給金の支給目的が、損害の回復ではなく、被害者(労働者)の福祉向上を目的としているためです。

このため、相手からの賠償金と、労災からの特別支給金の給付が見込まれる事案では、労災保険の申請をしたほうが、被害者にとってプラスとなります。

3 労災保険と慰謝料

特別支給金の給付を受けることができることが労災保険の利点ですが、逆に不利な点もあります。

それは、労災保険では、慰謝料に相当する支払の制度がない点です。

このため、慰謝料については、労災保険からではなく、相手方か、自動車賠償責任保険あるいは任意保険からの支払を受ける必要があります。

4 特別支給金の申請について

特別支給金のみの請求書はなく、休業あるいは後遺障害に対する労災保険金の給付を請求することになります。

この請求後、労働基準監督署において所定の調査がされ、相手方からの賠償が未了の場合は補償金と併せて特別給付金が支給され、、相手方からの賠償がされている場合は特別支給金のみが支給されることとなります。

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