「債務整理」に関するお役立ち情報
特定調停とは
1 特定調停とは
特定調停とは、借金を滞納しているか、もしくは滞納しそうな債務者の申立てにより、簡易裁判所がその債務者と債権者との話し合いを仲裁し、返済条件を軽くするなどの合意が成立するよう働きかけ、債務者が借金を整理して生活を立て直せるよう支援する制度です。
特定調停では、債権者からこれまでの取引履歴を開示してもらい、当初の借り入れをした時点にさかのぼって利息制限法の上限金利(15~20%)による引き直し計算をします。
そして、引き直し計算によって減額された元本をもとに分割して返済していくことになります。
もっとも、債権者の中には特定調停に対して必ずしも協力的でない対応をする者もいます。
そのような場合は、調停成立までの期間の遅延損害金や調停成立後の利息(将来利息)を支払わなければならない場合があります。
2 特定調停と任意整理の違い
⑴ 公的手続か私的な手続か
任意整理は、弁護士が債務者の代理人となって各債権者と和解交渉を行う私的な整理方法です。
これに対し、特定調停は、裁判所が仲裁役となって債務者と各債権者との和解の成立を支援する公的な手続です。
参考リンク:裁判所・特定調停手続
特定調停と任意整理では様々な違いがありますが、大きな違いは、取立てが止まる時期と、債務名義の有無です。
⑵ 取立てが止まる時期
特定調停も任意整理も、債権者からの取立ては止まりますが、特定調停の場合、実際に裁判所に申立てをしない限り、取立ては止まりません。
⑶ 債務名義の有無
特定調停の場合、合意が成立すると調停調書という書面を裁判所が作成します。
この調停調書は裁判の判決と同じ効力があります。
これを債務名義と言います。
もし、債務者が債権者との合意どおりに支払うことができなかった場合、債権者は給料差押え等の強制執行をすることができます。
これに対し、任意整理の場合も、債権者と合意ができたら和解書という書面を作成しますが、当事者が任意で作成したものであり、判決と同じ効力はありません。
3 特定調停のメリット
⑴ 借金の減額が可能な場合がある
任意整理と同様に借金をした当初にさかのぼって利息制限法の上限金利(15~20%)まで金利を引き下げて再計算することにより借金を減額することが可能である点が挙げられます。
⑵ どの債権者と合意するかは任意に決められる
どの債権者と合意するのかを自由に選ぶことができる点もメリットといえます。
⑶ 強制執行の手続を停止させることができる
裁判所に「民事執行停止の申立」を行うことにより、既に行われている強制執行手続が停止できることがあります。
4 特定調停のデメリット
⑴ 準備が煩雑である
特定調停を申し立てるには、申立書、関係権利者一覧表や財産の状況を示す明細書が必要となります。
⑵ 債権者からの取立て行為が止まるまで時間がかかる場合があること
申立てを行うには各種の書類等を準備する必要があります。
これらの準備に時間を取られると、それだけ申立てが遅れることになりますので、債権者からの督促が止まるまで時間がかかることになります。
⑶ 出廷が必要である
債務者は、債権者との話し合いを行うため簡易裁判所に出廷する必要があります。
⑷ 解決までに時間がかかることが多い
特定調停の場合、調停委員が仲裁に入るとはいえ、基本的には本人が各債権者と交渉する必要があります。
また、債権者ごとに交渉をしなければならないため、1回の調停に数時間を費やすこともあります。
また、裁判所は平日だけしか開廷していませんので、何回か仕事を休んで調停に行かなければならない方が多いです。
⑸ 過払い金の返還を受けられないこと
特定調停は、過払い金を回収する制度ではありません。
したがって、一部の債権者に過払い金が発生していた場合は、別途過払い金返還請求訴訟を裁判所に提起する必要があります。
そのため、特定調停では過払い金を踏まえた返済の計画を立てることが困難になってしまいます。
⑹ 調停が成立しないことがあること
特定調停は、債権者が同意しないと調停が成立せず債務整理ができません。
その場合、自己破産、個人再生等の公的な債務整理の手続をとるかどうか検討する必要があります。
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