交通事故における治療費の16条請求とは
1 治療費の16条請求とは何か
治療費の16条請求(「被害者請求」とも言う。)とは、相手方の任意保険からの治療費の支払いを受けず、ご自身で病院等の医療機関での治療費の支払いをし、その支払った治療費を相手方の自賠責保険会社に対して請求をする方法です。
相手方保険会社が直接医療機関に治療費を支払ってくれる一括対応と違って、まず治療費を自己負担し、その後診断書や領収書などの書類を整えて自賠責保険に提出し、後払いをしてもらう形の請求になります。
2 どのような場合に治療費の16条請求を使えばいいのか
基本的には、相手方保険会社に一括対応をしてもらった方が、被害者の方で立替金を準備する必要がありませんし、書類をそろえて自賠責保険に提出する必要もないので楽かつスムーズで、補償も得やすいものになります。
では、どのような場合に治療費の16条請求を使うものなのでしょうか。
それは、主に相手方保険会社が治療費の医療機関への直接支払いを拒否している場合や、一部は支払うもののそれ以外は支払を拒絶したような場合です。
相手方保険会社は、怪我が交通事故によって生じたものかどうか判断がつかない場合(因果関係が不明な場合)や怪我に対する治療の必要性が認められるのか微妙な場合(怪我に対する治療が過剰ではないか疑わしいような場合も含む)、あるいはこちらの過失の方が大きいような場合には、一括対応をしてくれません。
このように一括対応を、全部または一部否定されたような場合に、治療費の16条請求を使います。
3 治療費の16条請求の注意点
治療費の16条請求をする際には注意しなければならない点があります。
1つめは、自賠責保険の上限額についてです。
自賠責保険の上限額は120万円までとなっており、それを超えた分については支払われることがありません。
治療費・休業損害・慰謝料などすべてを合わせて120万円までなので、長期の通院の場合には十分な保険金が支払われないことがあります。
2つめは、自賠責保険における必要性の判断についてです。
自賠責保険は、請求をすれば当然に支払いをしてくれるわけではなく、交通事故と怪我およびその治療との因果関係がある、必要なものであるとの認定がされて支払われるものになります。
特に、ミラー接触の事故、駐車場での事故、逆突の事故、物損が軽微な事故などについては因果関係が否定されやすい傾向がありますので、治療費の16条請求さえすればよいとは思わない方がいいでしょう。
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