労災で死亡した場合の逸失利益
1 逸失利益について
労災事故で亡くなった方が、生前、お勤めや年金などで一定の収入を得ていた場合、事故で亡くならなければ得られたであろう収入について、事故の相手方に賠償請求することができます。
この事故で亡くならなければ得られたであろう収入のことを「逸失利益」といいます。
2 逸失利益の算定方法
逸失利益は、事故前の年収から、死亡していなければ生じたであろう生活費に相当する金額を差し引いた金額に、所定の期間に応じたライプニッツ係数を乗じて算定します。
この所定の期間は、賃金であれば、事故により死亡した年齢から、一般的な労働可能年齢とされる67歳までの年数であり、年金であれば、死亡当時の年齢に対応する平均余命の期間となります。
ライプニッツ係数とは、将来の収入をまとめて先取りすることによる利得を防ぐため、現在では利息を年率3%とした場合の利得を減じることとしています。
例えば、5年間のライプニッツ係数は4.5797とされており、5よりも小さい数字となっていますが、その差が、先取りの利得分として差し引かれることとなります。
また、収入から差し引く生活費については、亡くなった方の性別や年齢、世帯の有無などに応じて、年収の30%から50%程度を控除することとなります。
例えば、年収500万円、独身男性(生活費控除率は50%)、計算の対象期間が5年である場合、逸失利益の算定方法は、次のとおりとなります。
500万円×(1-50%)×4.5797=1144万9250円
3 若年者の年収について
亡くなった方が30歳未満の場合は、実際の年収ではなく、労働者全体の平均賃金に基づいて算定されます。
これは、若年の方の賃金は低額であることが多い一方、このような状態が一生涯にわたって継続するものとして算定することは、実態(亡くなった方が生存していたのであれば得られたであろう生涯の賃金合計額)に合わないためです。
また、労災の対象外ではありますが、就労前の学生の方が亡くなった場合、その逸失利益の算定に当たっては、労働者全体の平均賃金に基づいて算定されるのに対し、就労したとたんに、これより金額が低い実際の収入を前提に計算したのでは、就労前の学生と比べ不公平となってしまうことも、平均賃金による理由とされています。
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