債務整理と任意売却
1 住宅ローンが支払えなくなった場合
住宅購入時には、ほとんどの方が住宅ローンを組むかと思います。
住宅ローンを組んだ場合、特に問題がなければそのまま支払いを続け、完済することになります。
しかしながら、住宅ローンの返済期間は少なくとも10年以上の長期間に及ぶことが多いでしょうから、この間に様々な事情で住宅ローンの支払いができなくなってしまうことも少なくありません。
住宅ローンを組む際は、この住宅に抵当権が設定されているのが通常です。
ローン滞納期間が数か月に及ぶと、銀行等の住宅ローンの債権者から抵当権の実行をされて、家が競売にかかって売却されてしまいます。
参考リンク:裁判所・民事執行手続
また、その売却代金は住宅ローンの残債務から差し引かれて、残った債務については、債務者が払っていかなければなりません。
2 競売での売却価格は市場価格よりも安くなることがほとんど
競売で自宅を売却した場合、その価格は市場価格の7割程度でしか売れないことが通常です。
そのため、自宅を売却した後に残る債務をできるだけ減らすために、裁判所を通じる手続きである競売ではなく、あくまで債務者が任意に売却し、その売却代金を銀行等の債権者に支払っていくという任意売却を選択することもよくあります。
任意売却後の残債務の支払いが困難な場合は、債務整理を検討することになるかと思います。
3 競売と任意売却の違い
任意売却が競売とどう異なるのか、詳しくはわからないという方も多いかと思います。
具体的な違いとしては以下のものが挙げられます。
⑴ 手続きの主体が異なります
任意売却と競売は、住宅の売却の主体が裁判所か所有者かという点が異なります。
⑵ 自宅の明渡しの期間が異なる場合があります
任意売却の場合、買主の意向により、競売に比べて明渡しまでの期間が短くなる傾向があります。
⑶ 売却価格が異なる可能性があります
任意売却は所有者の意思で行うことができるため、一般的に競売より高く、市場相場に近い価格での売却が可能です。
その分、残ったローンや借金など(残債務)を少なくすることができます。
⑷ 買主と費用面での交渉が可能な場合があります
任意売却の場合は、競売の場合と異なり、金融機関や保証会社などの債権者との合意があることを前提として、任意売却を実行するためにかかる諸費用すべてを売却代金の中で清算することで、費用を控除した売却代金全額を返済に充当することができます。
また、任意売却の場合は、競売の場合と異なり、買主との交渉により引越費用等を受け取ることが可能な場合があります。
このように、手元に資金を残すことができるかどうかも、競売と任意売却とで異なるところです。
⑸ 任意売却の場合は自宅に住み続けられる可能性があります
競売の場合は、ほとんどのケースで強制退去となります。
これに対し、任意売却では、「リースバック」という方法を取ることで、そのまま住み続けるということができる場合もあります。
リースバックとは、任意売却した買主から、売却した自宅を賃借して今の家に住み続ける方法をいいます。