労災
労災の慰謝料の相場について
1 労災の慰謝料
労災の慰謝料額を検討するに当たっては、交通事故における慰謝料の基準を適用するのが一般的です。
事故によるけがや死亡という点について、交通事故と労災事故は共通しているためです。
また、慰謝料は、けがによる慰謝料である傷害慰謝料または入通院慰謝料と、後遺障害による慰謝料とに分けられるのが一般的です。
2 傷害慰謝料(入通院慰謝料)について
傷害慰謝料は、頸椎捻挫などの比較的軽い傷害の場合と、骨折などの重い障害とで、基準が異なります。
例えば、けがの治療のため6か月通院した場合の判決での基準とされる金額は、軽い傷害では89万円程度であるのに対し、重い傷害では116万円程度とされています。
ただし、通院回数が通院期間に比べて少ないと、基準より少なめの金額となる場合があります。
一方で生死の境をさまようような重傷であった場合には、基準を上回る金額となることもあります。
また、上記は裁判所で判決まで至った場合の金額であり、裁判に至る前に合意により解決した場合は、上記の8割程度の金額にて合意されることが多くなっています。
なぜこのような金額かといいますと、被害者にとっては早期解決の利益を、加害者(保険会社)にとっては基準よりも減額した金額による経済的な利益をもたらすことにより、双方が示談による利益を得ることができるようにするためです。
また、傷害慰謝料は、入通院期間が長期化するに従い、増額されることとなっていますが、慰謝料の目的は、入通院による負担を賠償することのほかに、治療期間が長引くことにより、傷害による苦痛が長引くことに対する不利益を賠償することも目的としています。
3 後遺障害慰謝料について
後遺障害は、最も重い後遺障害である1級の傷害から、最も軽い14級の傷害まであり、それぞれに該当する後遺障害の内容が定められています。
慰謝料については、裁判での基準として、例えば1級であれば2800万円、14級であれば110万円とされることが多いです。
ただし、必ずしもこの金額というわけではなく、具体的な事案に応じ、変動があります。
4 労災保険と慰謝料
労災保険からの支給項目の中には、慰謝料についての項目がありません。
このため、加害者が存在する労災事故について、多くの場合は、労災保険からの給付を受けた後でもなお、加害者に対する請求分が残ることとなります。
労災の申請で注意すべき点
1 労災保険の対象となる事故について
労災保険の対象となる事故は、業務中の事故である業務災害と、通勤途中(帰路も含む)の事故である通勤災害の二つです。
これ以外の事故は、労災保険の対象外となります。
2 業務災害の申請で注意すべき点
申請の際には、事故の状況を申請書に記載する必要があります。
事故の日時場所及び事故の状況を具体的に記載することに加え、「業務中の事故であること」を記載する必要があります。
例えば「会社内の階段を歩行中、左足を踏み外し、左足首を捻挫した」とのみ記載したのでは、業務中の事故なのか、それとも帰宅途中の事故など業務外の事故なのかが不明です。
これに対し、「社内での会議に参加するため、事務室から会議室に移動するため、階段を歩行中、左足を踏み外し、左足首を捻挫した」とすれば、業務中の事故であることが明らかになります。
3 通勤災害の申請で注意すべき点
通勤災害は、会社の業務からは外れた、通勤途中の事故となります。
このため、労災保険の申請に当たっては、業務との関連は不要となりますが、事故場所が通勤経路上にあることが必要です。
このとき「会社に届け出た通勤経路と異なった場合、労災保険の対象外となるのかどうか」が問題となりますが、「合理的な通勤経路」の範囲内であれば、労災保険の対象となります。
一般的に、通勤経路は一つではなく、例えば公共交通機関使用の経路と自家用車使用の経路が併存する場合など複数あるのが通常ですので、複数あるうちの経路のいずれかで事故が生じた場合は、労災保険の対象とされる可能性があります。
また、日常的な買い物などのため、一時的に通勤経路を離れてしまった場合、外れた経路での事故は労災保険の対象とはなりませんが、通常の通勤経路に戻った後の事故であれば、労災保険の対象となります。
「通勤途上の事故」とされるかどうかについて、判断が難しいことがありますが、迷った場合は、とりあえず申請してみる、ということでよいかと存じます。
4 お勤め先による証明
申請書の記載欄の中に、事故の日時などについて会社による証明を記載する欄があります。
お勤め先によっては、この記載をしてくれない場合がありますが、この場合は、労働基準監督署に事情を説明し、その指示に従ってください。
5 申請書の提出先
多くの場合は、労働基準監督署への提出となりますが、労災保険の指定病院で受診する場合は、病院の窓口に提出することとなりますので、注意してください。
労災における弁護士法人心の強み
1 当法人の特徴
弁護士法人心では、交通事故の事件について、これを集中的に取り扱う弁護士がおり、多数の受任をいただいております。
多数の交通事故を受任し、解決に導くことで蓄積した知識が、次にお伝えするとおり、労災についても役に立っています。
2 労災事故と交通事故との共通点
一見、労災事故と交通事故は、全く別の事故に思われるかもしれません。
しかし、次のように、2つの共通点があります。
⑴ 損害額の算定
交通事故による損害と、労働災害による損害は、いずれも、死亡またはけがによる損害であることについて共通しているため、損害賠償はいずれも共通した基準により検討されます。
先にお伝えしたとおり、当法人では多数の交通事故の事件を取り扱っており、担当弁護士は、交通事故に対する賠償の基準について精通しております。
このため、交通事故と同じ基準である、労災事故における賠償の基準・算定についても精通しております。
⑵ 後遺障害の認定
交通事故により後遺障害が残った場合、あらかじめ定められた後遺障害の類型及び等級に当てはまるものと認められた場合には、これを前提として、後遺障害を理由とする損害賠償を請求することができます。
当法人の担当弁護士は、交通事故の事件を通じて、上記後遺障害について知識や経験を積み重ねております。
交通事故における後遺障害の類型及び等級は、実は労災保険における基準と同じ基準にて運用されています。
このため、当法人の担当弁護士は、労災における後遺障害についても、精通していることになります。
⑶ 通勤途中の交通事故について
労災事故は、勤務中の事故のほかに、通勤途中の事故(帰路も含む)が対象とされています。
通勤途中または勤務中に交通事故に遭った場合、この事故は、交通事故であると同時に、労災事故(通勤災害)にも該当します。
このような事故について、交通事故を得意としている当法人の弁護士がお役に立てることはいうまでもありません。
3 労災についてお困りの際は当法人にご相談ください
当法人には、自動車賠償責任保険において後遺障害認定業務に携わっていた職員も在籍しています。
また、医師との連携についても努めています。
労災に遭われた方が適切な保険金・損害賠償金を受け取れるように努めておりますので、労災についてお困りの際は、当法人にご相談ください。
労災について弁護士に相談したほうが良い理由
1 労災の手続きや会社との話し合いを任せられる
労災(労働災害)は、通勤中・勤務中に発生したけがや病気のことです。
もしも労災に遭った場合は、労災の手続きや会社側との話し合いを行っていくことになります。
労災に詳しいという方はあまり多くないかと思いますので、実際に手続き等を行うことになった場合には、対応方法などを調べながら進めていくことになるかと思います。
しかし、けがや病気の治療をしながら、労災の手続きや話し合いを行うのはご負担が大きいかと思いますので、弁護士にお任せいただくことをおすすめします。
労災に詳しい弁護士にお任せいただければ、ご自身は安心して治療に専念できるかと思います。
2 障害(補償)給付申請を行う場合
労災で重傷を負い、症状が残ってしまった場合、障害(補償)給付申請を行い認定されれば、認定された等級に応じて障害(補償)給付が支給されます。
障害(補償)給付は、等級によって支給される金額が大きく変わりますので、症状に応じた適切な等級が認定されることが重要です。
労災に詳しい弁護士にご相談いただければ、適切な等級が認定されるために治療中から気をつけるべきこと等のアドバイスが受けられるかと思います。
3 損害賠償請求を行う場合
労災が発生したことについて会社側に過失がある場合には、会社に対して民事上の損害賠償請求ができる場合があります。
しかし、会社が労災に関する責任を認めないこともありますので、損害賠償請求をするために重要なのは、労災が発生した直後から、適切に事実関係を把握し、会社側の過失を証明する証拠を集めておくことです。
ご自身で適切に証拠を収集することは難しいかと思いますし、そもそもどのような損害の賠償を請求できるのか、賠償額はどのように算定すればいいのか等、分からないことも多々あるかと思います。
損害賠償請求を行う場合は、労災に詳しい弁護士にご相談ください。